第13章 学生の本業
梅雨の時期特有のじめっとした暑さの中、昨日と同じように重たいリュックを背負って歩く。梅雨ちゃんはやっぱり6月が過ごしやすいのかな、なんて考えながら、向かう足は勝己の家を目指していた。
昨日間違えて勝己の教科書を持って帰ってしまい、今からでも届けようと勝己に連絡をしたのだ。
─ごめん。間違えて教科書持って帰ってきちゃった!今から届けに行っても大丈夫?─
─明日持って来い─
─来いってどこに?─
─俺の家。断るなんて選択肢ねえから─
…ということだ。確かに私に非があるから家まで持っていくのは全然構わないけど…うん。勝己はもうちょっとマイルドに話せないのだろうか。まあ、勝己の家に行くのも久しぶりだから正直ちょっと楽しみだな~なんて思ってるからいいんだけど。
そんなことを考えていると、あっという間に勝己の家にたどり着いた。この風景懐かしい。幼稚園児や小学生の頃、毎日のように遊びに来てたことを思い出す。
「えっ!?もしかして…?」
『うわあ!かっちゃんママ!!』
いざインターホンを押そうとした時、後から肩をぽんと叩かれ振り返る。そこには驚いた顔のかっちゃんママが立っていた。
「久しぶりだねえ!元気にしてた?」
『はいっ!久しぶりなのに、かっちゃんママ全然変わんないですね』
「でしょう~さすが、見る目あるね。それはそうと勝己に用でもあった?」
『あ、そうなんです。実は教科書を…』
「んじゃ遠慮なく上がった上がった!」
背中をグイグイと押され半ば強引に家の中へ入る。お邪魔します、と小さな声で呟く。しかし、家の中は薄暗くて勝己の姿は見えない。
「あのバカ息子なにしてんのかね。悪いけど部屋見てきてくれる?」
『はーい』
スーパーの袋を抱えてキッチンへ姿を消したかっちゃんママ。何度も来たことがあるので、この家の勝手はだいたい知っている。
勝己の部屋の前に立ち、コンコンとノックをする。が、返事はない。携帯を開けて勝己とのメッセージのやりとりを見返す。うん、時間は間違っていない。さっきちらっと見えたけど、玄関にいつも勝己が履いている靴があったから家にいるのは間違いなさそうだ。
『……勝己~入るよ?』
声をかけるがやっぱり返事はない。ゆっくりドアノブを回して部屋の中をのぞき込む。