第13章 学生の本業
なんだかんだで目がぱっちり覚めた勝己。教科書を渡してすぐにおいとましようとしたけど、何故か勝己と机を挟んで座っているのが今の状況だ。
『……あの、帰って勉強したいんだけど』
「勉強ならここですりゃあいいだろ」
『いやいやそんな…迷惑かけちゃうし』
「だったら最初っから家に呼んでねえよ。おら、さっさとしろ。わかんねえとこ教えたる」
もしかして最初っからそのつもりだったのだろうか。すぐ帰るつもりだったのでお菓子とかジュースとか、なんにも持ってきていない。かっちゃんママもいるなら、それこそ手土産持ってくればよかった。勝己も一緒に勉強したいならそう言ってくれたらよかったのに。まあ、勝己に限ってそれはないか、と自己完結し教科書をパラパラとめくる。
「入るよ!はい、これ紅茶」
『わ、ありがとうございます!』
「いいんだよ」
「つうか、さっき出かけたんじゃねえのかよっ!?なんでこんなに帰ってくんの早えんだ!」
「用事が早く済んだからに決まってんでしょ!それよりあんた、呼んどいて寝てるなんてどういう神経してんのっ!?」
「うるせえっ!こいつが来んの遅せぇからだろうが!!」
「わざわざ来てもらってんのに上からもの言ってんじゃないよ!!」
「って、なにすんだ、クソババアっ!!」
『………』
容赦なく勝己の頭を叩くかっちゃんママ。きっと勝己の頭を叩くだなんて、かっちゃんママにしか無理だろう。勝己も口で言い返してはいるけど、手を出さないところに親への愛を感じてちょっぴり勝己が可愛く見える……ほんのちょっぴりだけ。
この2人のやりとりも相変わらずだ。まるで勝己が2人いるようなそんな不思議な感覚になる。親子なので当然なのかもしれないけど。
『まあまあ、勝己落ち着きなって』
「ん?いつから勝己って呼ぶようになったんだい?」
『あ、最近です』
「ふうん…へえ~」
「なんだよ、その目気色わりぃな!!」
勝己を見ながらニヤニヤと笑うかっちゃんママは、それはそれはご機嫌で部屋を出ていった。
勝己のことは勝己と呼んでいるけど、小さい頃からかっちゃんママはかっちゃんママと呼んでいたので、今さら勝己ママと呼ぶのには違和感がある。