第13章 学生の本業
いやいやいや、切島くんは服が可愛いと褒めてくれているのであって、決して私がとかじゃない。勝己に言われた通り、なんて自意識過剰なんだ、私。勝手に勘違いして赤くなって、さらに恥ずかしい。熱くなった頬を少しでも隠したくて両手で包み込む。
「あ、暑いな…この店冷房付いてねーのかな?」
そう言ってジュースをごくごく飲み干す切島くん。わ、私も普通に振る舞わねば。
『う、うん。暑いね…あれ、そういえばさっき何か言いかけてなかった?爆豪って聞こえたけど』
「えっ!?いや…その………爆豪遅せぇな!あいつもしかして、うん──」
「ちげえよ」
『あ、おかえり』
タイミング良く帰ってきた勝己のおかげで、妙な雰囲気から抜け出すことが出来た。そのことに安心して胸をなでおろす。
「…随分仲良くなったみてぇだが、なんの話してたんだ」
『ぅえっ!?』
「あ"?」
ギロりと睨まれ心臓がドキリと波打つ。思いっきり声が裏返り、動揺したのがバレバレだ。いや、そんなやましいことを話していたわけじゃないけど。切島くんに助けてもらおうと視線をやると、一瞬そらされてしまったが、いつも通りの笑顔になった。
「落ち着けよ。俺がわかんねぇとこ教えて貰ってただけだって」
『あ、うん。そうそう!』
「んのわりには全然進んでねぇじゃねえか」
「あ~これはその…今からやります」
慌ててノートと向き合う切島くんを、怪しそうにジロジロとみる勝己。とりあえず助かった。切島くん、ありがとう。そしてなんだか申し訳ない気持ちになった。
「おかえり。勉強は捗ったかい?」
『あ、パパ!ただいま~。うん、期末もなんとかなりそう』
勝己に送ってもらい、玄関を開けるとパパが出迎えてくれた。教科書やらノートやらが入っている重たいリュックを床に下ろし、軽くなった肩を回して靴を脱ぐ。
『でも、まだ不安なところがあるんだ~。ご飯食べたらもう少し勉強するね』
「は真面目だな!…そうだ、今日は私がご飯を作ろう。そうすれば少しでも勉強できるしね」
『えっ、いいの?じゃあお言葉に甘えて』
「どんどん甘えなさい!」
今日のご飯はパパに任せて、来週のテストに備えよう。自分の部屋に入り、リュックの中から教科書を取り出す。
『あ…この教科書……』