第12章 レンジでチンして
「スタミナ切れか」
思い切り刀を振りかざす。が右手に持つ刀で防がれ、左手に持つ刀が首筋を掠める。悔しいけどステインの言う通り。動けば動くほど頭が割れるように痛い。よろけた私の肩をステインが掴んで、首筋に長い舌が這う。
『はっ…』
「から離れろ!!」
パキパキと音を立てて巨大な氷が私とステインを引き離した。ステインは咄嗟に後ろに回避した。何故か急に体が動かなくなり、ふっと体の力が抜ける。地面に倒れる前に誰かが私の体を抱きとめた。
「大丈夫か?」
『しょ…と、くん……体が…』
「あいつの個性だ…でもそれだけじゃないだろ!そんな体で無茶するな!」
初めて焦凍くんに怒られた。焦凍くんの腕の中で小さく笑う。意識がだんだんと遠のいていく。焦凍くんの言う通り、きっとステインの個性だけではない。敵と戦闘中だと言うのに、私はそのまま意識を手放した。
『…ん、ぅ……』
「っ!!」
目を開けた瞬間飛び込んできた赤と白。それと鼻をつく薬品の臭い。保健室…ではなさそうだ。
「、くん…」
「良かった…気がついたんだね」
横のベッドには飯田くん、正面のベッドにはデクもいた。何故か焦凍くんは私のベッドに腰掛けているけど。
『……あの後どうなったの?』
聞いていいのか少し迷ったけど、やっぱり気になったので思い切ってステインのことを聞いてみる。ここにみんながいることに安心したから、というのもあるかもしれない。誰が話そうか目を合わせたあと、飯田くんが口を開いた。
『…デクと私を?』
「翼を持った脳無に攫われそうになった時、やつが脳無を止めたんだ」
「助けた…のかどうかはわからないがな」
『そうなんだ』
その理由は本人と神のみぞ知る、だ。今となってはその理由を知る由もない。
「短い間でしたがお世話になりました」
『ありがとうございました』
深々とお辞儀をして感謝を伝える。長いようであっという間だった職場体験もこれで終了だ。
「小僧から聞いたぞ。ヒーロー殺しとの戦い、面白い動きをしたそうじゃないか」
『あの時やっと気が付いたんです。でもまだまだなので、もっと訓練しようと思います』
「ま、頑張れや」
『はいっ!』