第12章 レンジでチンして
いた。デクと飯田くん、それに焦凍くんまで…見知らぬヒーローらしき人もいる。彼らと対峙しているのは恐らくステインだ。嫌な予感が的中してしまった。
デクが血だらけで倒れていて、飯田くんも身動きが取れないのか地に伏せている。私が行かなきゃ。渾身の力を込めて最大限に片翼を広げる。そこからひとつ抜き取り、羽を振り上げたままビルの屋上から飛び降りる。狙うは氷の上に立つヒーロー殺し。
「っ、!」
『やあっ!!』
思い切り刀を振りかざすが、寸前で私に気がついたステインは自身の刀でそれを防いだ。強い力で弾き飛ばされ、空中でバランスを取り地面に降りる。
「っ!?」
「くんまで…」
「待っててって言ったのに」
『…呼んだの、デクじゃん……』
へへっと笑う私をじろりと睨むステイン。ふらつく足に力を入れ、刀を地に突き刺す。
「助けに来たのか?今にも倒れそうだぞ」
『…それでも、仲間のために……私は戦う…!!』
「……良い」
ニヤリと笑うステイン。私を止めようとする焦凍くんを聞こえないふりをして、ステインに向かって走り出す。同じように刀を抜いたステインは、正面から走ってくる私に向かって刀を振り上げる。寸前のところで空中に回避し、勢いをつけて刀を振り上げる。再びそれを防がれてしまう。
動きが速い。今までの敵とはレベルが違う。ふと頭の中でグラントリノさんの言葉がよぎる。狭い場所だと不利になる私の個性。デクとグラントリノさんの室内での戦闘訓練。
『……そうか』
「ん?なんだ、もう終わりか」
翼を小さくした私を見て、戦意消失だと勘違いしたステイン。刀を強く握って姿勢を低くする。思いっきり地を蹴ると同時に小さな翼を動かす。
「あの動き、まるで……」
小さな翼では空を飛ぶほどの力はない。でも飯田くんのエンジンみたいに素早く移動することは出来る。壁や地面を蹴って俊敏に動き続ける。グラントリノさんはデクとの戦闘訓練を見て、自身の動きを私に学び取って欲しかったんだ。
グラントリノさんの動きを真似て、ステインに攻撃を仕掛ける。といってもグラントリノさん程のスピードは出せず、ステインに攻撃を防がれてしまう。刃物がぶつかる音が路地裏に響く。しかしその音の威力がだんだん弱まっていく。