第12章 レンジでチンして
玄関先で、しかも朝食前に、こんなにも話し込むのは申し訳ないけど、デクに続いて私も最後に一つだけ気になることを口にする。
『あの、何故私にも指名したんですか?話を聞いてたら、デク…緑谷くんを指名するのはわかるんですけど、私を指名した理由って、なんですか?』
「………」
グラントリノさんの目が細まる。まるで何かを懐かしむような、そんな表情をしている。
「……それは俺から話すべきことではない」
『え?』
「そのうちわかる」
『そう、ですか』
なんとも煮え切らない返事をする。指名したのはグラントリノさんなのに、なぜ理由は言えないんだろう。これ以上聞いても無駄だと思い、とりあえずこの場を引くことにした。
「じゃあ以上!達者でな」
『はい!本当にありがとうございました!』
「ありがとうございました!」
スーツケースを両手で抱えて駅へと向かう。達成感と少しの寂しさを感じながらデクと2人道をゆく。
「小僧!小娘!誰だ、君らは!?」
『えっ!?』
「ここで!?」
『……あ』
「えっとだから…緑谷出──」
『そうじゃないよ』
ちょいちょいと裾を引っ張り、デクの言葉を遮る。デクもすぐにハッとなって、もう一度グラントリノさんと向き合った。
「デクです!!」
『…ラファエル、です!!』
その言葉に納得したのか、グラントリノさんは息をついて建物の中へ姿を消した。2人で顔を見合わせて、再び駅の方へと歩き始めた。