第12章 レンジでチンして
『大丈夫ですか!?』
先程の衝突によって怪我をした人を介抱する。頭をぶつけたのか意識が朦朧としていて、頭から血を流している。乗務員さんが駆けつけてきて、慌てふためく乗客を懸命になだめている。車内は完全にパニック状態だ。
「、ごめん。ここで待ってて!!」
『デクっ!?』
「君!ちょっと!危ないって!!」
呼び止める声を振り切り、グラントリノさんを追って車内から飛び出したデク。今すぐ私も追いかけたいけど、今はこの人を助けたい。
『もう少しだけ我慢しててください』
本来なら今ここで個性を使うのは法を破ることになる。でも、だからって黙って見過ごすなんてできない。涙を流し怪我を治す私の姿を見て、乗務員さんが驚いている。
「君は、ヒーローなのか?」
『私は……ヒーローになるものです!!』
これで全員─といっても数人だが、応急処置は終わった。傷口は塞がったので、あとは乗務員さんに任せよう。
「助かったよ。さ、君も座席に戻って」
『ごめんなさい。私も行きます!!』
「えっ!?駄目だ、待ちなさ──」
伸ばされた乗務員さんの手を躱して、車内から出てグラントリノさんとデクが行った方へ足を進める。色んなところから爆発音や悲鳴が聞こえてくる。
もはや法なんて気にしている場合じゃない。翼を広げて街の方へ移動する。
『うっ……』
こんな時に限ってズキズキと頭が痛み出す。ヒーローは体調不良なんて関係ない。これくらいの頭痛なんてことない。ビルの屋上に下りて息を整える。どこから加勢に行こうか。ここから1番近いところ…周りを見てどこに向かうか考えていると、ポケットのものが大きく振動した。
『デクからだ』
こんな時に、と思ったけど、こんな時だからこそきっとデクは何かを伝えようとしたんだろう。デクからのメッセージには、文章がなく位置情報だけが一斉送信されていた。マップが示すのはここからそう遠くない。つまり応援を呼んでいるんだ。見慣れないマップを頭に叩き込んで、携帯をポケットにしまい目的地へと向かった。
『はあ…はあ……』
謎の頭痛に邪魔をされながら、目的地周辺までたどり着く。頭痛のせいなのか、視界が少しだけ霞んで見える。フラフラになりながらビルの屋上を歩き、ビルとビルの間を覗き込む。