第12章 レンジでチンして
ものすごく強く歯ぎしりをする勝己の額には、今にもはち切れそうな血管が浮かび上がっている。何故か勝己にはベストジーニアスの事務所を推されたけど、やっぱり私はグラントリノさんのところを選んだ。最終決定はどこにしたのか勝己に聞かれ正直に答えると、今度は何故かデクにキレ始めた。
「おい、クソナード。もしなんかしやがったらタダじゃおかねぇからな!変な気起こしたらぶっ殺す!!!」
「ひぃいいいい!」
『ちょっと、勝己!なんでデクに怒ってるの?』
「うるせえっ!!」
『やめなって!』
「っ、なにに触られてんだクソデク!!!」
「こ、これはがっ…」
「黙れえええっ!!!!」
──ということがあったのだ。私がデクと同じところを選んだのがよほど気に食わなかったらしい。それでも、私にだって自分で選ぶ権利はある。
そのやりとりのあと、勝己に何も言われてないか、デクはそう心配してくれているのだ。なんて優しい。大丈夫だよ、と言うと、デクは安心したように胸をなでおろした。
『…もうすぐ、保須市だね』
「うん。さっき送ったメッセージ、既読はついてるけど返事がないんだ。いつもすぐに返事くれるのに」
『何もないといいけど』
「そうだね」
思い出すのは職場体験に行く前の飯田くんの様子。体育祭後、お兄さんであるインゲニウムが大怪我をして、飯田くんの様子が気になって仕方がない。本人は大丈夫だというけど、インゲニウムを襲ったヒーロー殺し─ステイン…なんだか胸騒ぎがする。嫌な予感が的中しないといいんだけど。
「お客様、座席にお掴まり下さい。緊急停止します─」
車内にアナウンスが響いた瞬間、前方の窓から人が飛び込んできた。その人の格好からして彼はヒーローのようだ。大破された新幹線から姿を現したのは、USJの時にいた化け物だった。剥き出しになった脳に埋め込まれた目。その姿を見た瞬間、ぞわりと背筋が凍った。
「おまえたちは座ってろ!!」
「え!?」
『待──』
言い終わるより早く脳無に体当たりをして、街へ姿を消したグラントリノさん。街の方を見ると、至る所から黒煙が立ち上っている。
『ここって…』
飯田くんがいるであろう保須市。一体何が起きているんだろう。