第12章 レンジでチンして
職場体験3日目夕方。グラントリノさんとの戦闘を重ね、ボロボロになったデクの傷を癒す。
デクは実践あるのみで、私はグラントリノさんから2人の様子を見ていろ、と言われた。つまり見学。個性の使い方をもっと広げるヒントが、2人の戦闘訓練の中にあるらしい。
『大丈夫?』
「う、うん」
「傷が癒えたらフェーズ2へ行く。職場体験だ!」
コスチュームに着替え、いざ敵退治だ!と言うグラントリノさんについて行く。同じ人とばかり戦っていると、戦い方に癖がついてしまうので、様々なタイプと状況の経験を積むフェーズらしい。
タクシーに乗り新幹線に乗り込む。なんと、今から渋谷に行くのだという。
「どうだ?見ててなにか分かったか?」
ふとグラントリノさんに問われ、口を噤んでしまう。デクとグラントリノさんの戦闘訓練を見ていても、それが自分の個性にどう生かせられるのか、未だにヒントすらわからないでいる。正直に伝えると、グラントリノさんはやれやれと呆れたようにため息をついた。
「……そういえば、」
『ん、なに?』
隣に座るデクを見ると、少し焦ったようにソワソワしていた。一体どうしたんだ。首をかしげてデクを見ていると、モゴモゴとした口がゆっくり開いた。
「あの…大丈夫?その……か、かっちゃんと…」
『ああ、私は全然』
デクが言っているのは、職場体験に行く前の勝己との会話のことだ。教室で勝己と職場体験の話をしている時に、急にキレだしたあの事件──
「おい。もうどこ行くか決めたのか?」
『うーん。まだ少し迷ってる』
「俺はベストジーニアスんとこに行く。も指名来てたし、迷ってんなら一緒のとこにすりゃいいだろ」
『ベストジーニアスもいいけど、他のところで気になるところがあってさ』
「あ?どこだ?」
『事務所とかじゃないけど、えーっと……デクと同じところ』
「はあっ!?!?!?」
急に机をバンっと叩いて立ち上がる勝己。みんなからの視線が痛い。
『……ど、どうしたの?』
「そんなもん許すわけねえだろっ!!泊まり込みだぞっ!?分かってんのか!?!?」
『わかってるよ。なに怒ってんの?』
「分かってねえだろっ!!ふざけんな、ベストジーニアスにしろ!!!」
『それは自分で決めるよ』