第12章 レンジでチンして
どうせまた羽は落ちるだろうけど、ある程度集めておこう。近くにあった箒でササッと掃く。思ったよりも白い羽が集まり、自分でもちょっと引いた。いつか絶対この翼禿げる。
『あ』
ふと目に止まったものを手に取る。1mもないくらいの大きな羽。きっと翼を最大限に広げた時に落ちたんだろう。こんな大きな羽出せたんだ。それはふわふわとしていて、ただただ大きな羽だ。もしこれを硬く鋭利にできたら、接近戦で有利な武器になるんじゃないだろうか。
思い立ったらすぐ行動。早速翼を大きく広げる。もっと、もっと…それから力を入れて硬くする。意外と難しい。
『はあ…はあ…』
なんとか踏ん張り続けて羽を1本取り出す。先程よりも大きく長い羽。指先で触ってみると、それはまるで刃物のようだ。
『や、やった…!!』
羽の形をした刀。柄を握り刀を振り回してみると、ひゅんひゅんと、空を切る音が聞こえた。うん、これは使える。
『あ、あれ?』
へにょん、と力なく傾いた羽の刀。もはや刀ではなくただの大きな羽に戻ってしまった。刀のように硬いまま維持するには、まだ力が足りないのか。
『よし、もう1回!』
「おはよう、そして!どうした!?」
「昨日ちょっと自主トレしてたら夢中になってしまい…」
『お、同じく…ふあ……』
大きな欠伸を我慢出来ず、グラントリノさんの前であくび涙を流す。話の流れでパパの名前が出てきて、グラントリノさんが気になることを口にした。どういうことか詳しく聞こうと思ったけど、途中で宅配が来たので続きを聞くことは出来なかった。
届いた新品の電子レンジを早速使ってたい焼きを温める。朝食作ろうかと提案したが、グラントリノさんはたい焼きがお好きらしい。温めるのはデクに任せてお皿や飲み物を用意する。
「うひょーこれよこれ!時代はアツアツよ!!」
嬉しそうにたい焼きを頬張る。が、予想しない音が聞こえた。たい焼きをたくさん入れすぎて1部にしか熱が伝わらなかったらしい。
「あああわかった!グ、グラントリノさん!このたい焼きが僕っ…です!!」
『えっと…デク?』
「違うぞ。大丈夫か」