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君の涙【ヒロアカ】

第12章 レンジでチンして



 いやいやそんなはずはない。首をブンブンと横に振って気を取り直す。とりあえず翼を最大限に大きくしようと力入れる。バサッと音を立てて、白い翼が月明かりに照らされた。
 自由に…個性の使い方をもっと多様化できるってことなのかな。でもどうやって…考えても全く思い浮かばない。

 「うわあっ!」

 かなり高いところから落下してきたデク。ゴミ袋があるとはいえ、何回も地に叩きつけられては身が持たない。咄嗟に羽を飛ばして、デクを壁に縫い付ける。コントロールはかなり出来てきて、デクの体には当たらないように縫い付けることができた。あと数秒遅かったら今頃またゴミの上だ。

 「……あ、ありがとう」
 『ううん。落ちなくてよかった』

 壁に突き刺さる羽を一本一本抜いていく。片手が解放されたデクも、自分で羽を抜き始めた。

 「の羽って柔らかそうに見えるけど、結構硬いんだね…った、切れちゃった」

 切れた指先からは赤い血が流れている。今まであんまり意識したことなかったけど、戦闘訓練の時も体育祭の焦凍くん戦も、かなり硬い羽を飛ばしていた。ただの羽だったら、窓を割ったり氷に縫い付けたりする威力はない。
 全ての羽を抜き取り、デクは再び自主練習を続けた。手の中にある硬くなった羽を見つめる。少し力を入れて握ると、うっすらと血が滲んできた。結構鋭利だ。羽を掴んでひょいっと壁に投げてみる。羽は真っ直ぐに飛んでいき、見事に壁に突き刺さった。

 『…ダーツみたい』

 もしかしたらこれ使えるかも。個性の新しい使い方が見えてきた気がする。いや、でも、わざわざ羽を飛ばして拾って投げ飛ばすって相当手間だ。それなら最初から翼を振り切ってるほうがいい。
 いいこと思いついたと思ったけど、あんまり意味がなかった。

 力を入れれば羽を硬くすることができることはわかった。それなら防御にも使える。私が苦手とするのは接近戦だ。これをどうにかカバーできないかな。

 壁にもたれて座り込み、デクの独り言を聞きながら考える。意味もなく、そこらじゅうに落ちてる羽を拾いくるくると回して弄る。今この路地裏を見たら、白い鳥がゴミを荒らしているように見えるんだろうな。


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