第11章 トライアル
パパの話が終わり、放課後になってもまだ雨は止んでいなかった。勝己はどこにいるんだろう。教室を覗いてもいなかったので、昇降口へと向かう。
『あ、勝己!お待たせ』
「遅せぇっ!!」
『だから先帰ってて言っていたのに』
「うるせぇ!待っててやったんだから文句言うな!!」
『なんじゃそりゃ』
いつも通りの勝己の理不尽に呆れて笑いながら、靴を履き帰る。バカにされたと受け取ったのか勝己は盛大な舌打ちをした。
傘を広げようとした時、ふと両手をポケットに入れて歩きだそうとする勝己が目に入る。雨は結構降っている。
『あれ、勝己傘は?』
「あ?……忘れた」
『忘れた?朝から雨降ってたのに?』
「…………」
雨の日に傘を忘れるほど、朝急いでいたのだろうか。勝己は 口をモゴモゴさせながら黙っている。
『職員室行く?多分傘貸してくれ──』
「貸せ」
『え?』
もしかして今、貸せって言ったのか。私の傘を貸せ…ってことはお前は濡れて帰れとおっしゃっるのか。勝己の発言に衝撃を受けていると、バッと傘を奪い取られてしまった。傘を広げ先に歩き出す。その行動に呆然としていると、勝己の足が止まりこちらに振り返った。
「何してんだ、早く来いっ!」
少し傘を横にずらす勝己。左の肩が雨に濡れる。隣に来いという意味なのだろうか。恐る恐る傘の中に入ると黙ったまま歩き出した。
この緊張感はなんだろう。いつも通り一緒に帰ってるだけなのに、隣にいる勝己がとても近い。ちらっと見るとバチッと目が合った。すぐに思いっきり視線を逸らされ、またもや舌打ちをされた。勝己さん、聞こえてますよ。というより、舌打ちするくらい嫌なら傘忘れないでよ、と心の中で呟く。
「あ、来た来た!ちゃん!」
『げっ!』
名前を呼ばれ声のするほうを向くと、今朝の男達が手を振りながらこちらに向かって走ってきた。相澤先生に追い払ってもらったのに、なんともしつこい人たちだ。
「おい、誰だあいつら」
『なんか今朝追いかけられて…』
「は?なんだそれ、聞いてねぇぞっ!!」
『言ってないもん!』
「言えやコラ!」
『なぜっ!?』
2人でぎゃあぎゃあ騒いでいると、いつの間にか男達が目の前まで来ていた。ずっと私が出てくるまで張っていたのだろうか。