第11章 トライアル
体育祭の影響で注目の的となり、今朝は教室がその話題で溢れかえっていた。ハンカチで顔を拭きながら、百ちゃんや響香ちゃんと話していると相澤先生が教室に入ってきた。一瞬にして静寂に包まれる教室。相澤先生すごいな。
「今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ。コードネーム、ヒーロー名の考案だ」
席を立って大興奮するみんな。相澤先生が髪の毛を逆立たせると、再び静まり返った。
将来性に対する興味に近い、プロからのドラフト指名。映し出されたグラフは、焦凍くんと勝己の棒が飛び抜けていた。
「も指名きてんな」
『焦凍くんほどじゃないけどね』
上から3番目にある自分の名前。件数だけでいえば1995件とかなり多いほうだが、やっぱり上位2人には程遠い。
「これを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」
なるほど、これでヒーロー名の考案か。
「まあ仮ではあるが適当なもんは…」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!!この時の名が!世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!」
セクシーポーズで教室に入ってきたミッドナイト─香山先生。ネーミングセンスは香山先生の方が長けていると言って、相澤先生はゴソゴソと寝る準備を始めた。
「将来自分がどうなるのか。名をつけることでイメージがかたまりそこに近付いていく。それが名は体を表すってことだ」
ボードを百ちゃんから受け取りペンを持つ。キュッキュッとペンの音が聞こえてくる。そうか、みんなもう考えてあるんだ。私は最近ヒーローを目指し始めたから、名前とか全然考えたこともなかった。白紙のボードとにらめっこしているとあっという間に時間が過ぎていった。
「じゃそろそろできた人から発表してね!」
トップバッターは青山くん。なかなかすごいヒーロー名だ。意外にも多少修正されただけで、青山くんのヒーロー名は香山先生に認められた。次に発表した三奈ちゃんはあっけなく却下され、教室内は不思議な空気になったが、それを変えたのは梅雨ちゃんだった。
それから次々とみんなが発表していき、残るは再考案の勝己と飯田くん、デク、そして私になった。