第3章 交渉※
「海軍本部に図書室がないか聞きたかったのだ」
「図書室?」
突拍子もない回答に、いつものスモーカーなら少しは疑問に思っただろう。
しかし、アルコールの回った今の頭では、その余裕はないようだ。
「…あぁ、資料室ならある。海軍の読本や武器の設計・戦術に関する資料、文学書なんかも揃っている」
スモーカーの話では、あらゆるジャンルの資料や本が集まっているように思えた。
「へぇ、あとは?」
「そんなに行ったことねェし詳しくは…」
まだ何か思い出しているような、知っていそうな顔をしたのを、見逃さなかった。
私はぐいと身体を近づけると、スモーカーの口から葉巻を奪い去った。
「この酒は、葉巻と一緒じゃない方が美味しいと思うが」
上目使いで言うと、指先でスモーカーの唇をなぞってみせる。
ここまでされて、理性を抑えられた男など見たことがない。
スモーカーは私の腰を抱え引き寄せると、首元に顔を埋めた。
*
「もっと思い出してくれないか?」
珍しい本に興味があるんだ、と耳元で囁いた。
スモーカーはソファに座ったまま、向き合う形で私を抱えている。
「確か…歴史的価値のある書物を保管している部屋があったはずだ」
普段は鍵がかかってて俺も入ったことはねェが、と漏らすと、首筋にキスをひとつ落とす。
頭を抱える手つきが優しくて、数日前に首を絞められた時とは大違いだ。
腰に回された太い腕は、いつの間にか服の内側を撫でていた。
首筋にいくつも痕を付けられながら、思考を巡らす。
軍事機密になるような資料を、海軍が掌握していないはずがない。
例えば、危険人物、悪魔の実、ポーネグリフ、古代兵器などについての情報だ。
龍騎士に関与する資料はほとんど見たことがなく、私は自身のことをほとんど知らない。
自分の正体を知ったその日からずっと、知りたいと思っていた。
龍騎士とは何か。
必ずどこかにあるはずだ。