第13章 冀求
首元を解放された私は、咽ながら立ち上がり様子を伺った。
スモーカーはいつもの険しい表情を一層強くさせて、ドフラミンゴへ十手を突き付けている。
「…常に目を光らせてなけりゃ俺に気付けねェ、海賊嫌いのてめェがxxxxを庇うとは笑わせる。だが、お前ごときが手にしていい女じゃねェんだよ」
「黙れ、貴様の思い通りにはさせねェ」
スモーカーは、海軍の中でも一際正義感の強い男だと思う。
力づくで私を捻じ伏せようとするドフラミンゴが許せないのだろう。
そして、それ以上に…。
「スモーカー、やめろ。お前は手を出すな」
私は間に割って入り、咳交じりの擦れた声で、これは私の問題だとスモーカーを窘める。
自分一人が犠牲になればそれだけの話で済んだのだが、こうなってしまっては少しでも話を拗らせて騒ぎにしたくなかった。
一方で、とても太刀打ちできる相手ではないとも思っていた。
「その通りだ、スモーカー。てめェはxxxxに近付けたつもりでいるのだろうが、利用されているだけだ」
「構わねェ。俺は貴様のような下衆を許せねェだけだ」
ドフラミンゴは不機嫌になるどころか、傑作だと高笑いをしている。
「だったら遊んでやろうか?」
ニタリと笑って指先をスモーカーへ向けると、場が一気に緊張した。
このままでは衝突してしまう…どうすれば…。
その時、張り詰めた空気を割くように、飛ぶ斬撃がひとつ半身を掠めた。
ドフラミンゴはそれをひらりと躱すと、代わりに窓がすぱりと斬れ落ちる。
「フフフッ…手強いライバルが多いとうんざりするぜ」
ドフラミンゴは部屋の入り口に立つ男、鷹の目を見て笑った。
ミホークは、鋭い眼光を真っ直ぐに向けて凄む。
「ここで斬られて死ぬか?ドフラミンゴ」
「死なねェさ。が、今ここでお前とやり合う気はねェ」
じゃあなxxxxと軽く笑ってみせると、ドフラミンゴはあっさりと、崩れた窓から飛び去ってしまった。
「大事ないか、xxxx」
「ミホーク…ありがとう、大丈夫だ」
歩み寄ったミホークは私の首を撫でた。
ドフラミンゴに締め付けられたところが、痣になっているのだろう。