第12章 許色
「あの日、俺がなぜお前を優しく抱いたか知りたかったんだろう?」
やっと解放されるも、苦しさのあまりドフラミンゴの腕を掴んで立っているのがやっとだった。
「フフフッ!無茶苦茶にしてやろうと思ってたさ、他の女と同じように…始めはな」
「…ッ…なぜ、」
「言っただろ?惚れちまったってな。これからされることが分かっても、決して揺るがない美しい瞳のお前にな」
止めようとも思ったがコッチもどうにもできなくてなァ、と愉快そうに語る様は、いつものドフラミンゴのようにも、はぐらかしているようにも見えた。
「そんな戯言…信用など」
「俺は思い違いをしていた。お前に外側も内側もねェ。お前の芯は、揺るがない瞳の美しい色の正体こそが、麦わらだ。そうだろう?」
ドフラミンゴは痛い程に、私の瞳のその奥を覗き込む。
私の芯を見定めるように、それが折れたときのことを想像するように。
「そうだ」
私はドフラミンゴから目を逸らさず言った。
「私がどんな目に遭おうと、どこに属そうと、誰と関係を持とうと、それらに真意はない」
私に芯があるとするなら、それは誓いだ。
ルフィを海賊王にするという自分で立てた誓い、信念のようなもの。
騎士道といってもいいかもしれない。
ドフラミンゴの目論見が、やっと少し理解できた。
この男は愉しんでいるのだ。
私のような稀有な存在を、内側から壊すことを。
その機会をずっと探っていたのだ。
「ただ、ローのことは…少し気になるのか?フッフッフ!あいつも隅に置けねェな!」
私が襲われた日、ローの名前に反応したことを覚えていたようだ。
「そうだな、お前よりは信用に足る男だ」
「嫌われてんなァ!仕方ねェが、まぁどう思われようが構わねェ。ともかく俺は、そういうお前を気に入った」