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許色【ONE PIECE】

第12章 許色


自室の扉を開くと、ふわりと風が吹き抜けた。
部屋の窓が空いていると直感した私は、その理由も、そこに誰がいるかまで検討がついていた。

「なぜ私に構う、ドフラミンゴ」

部屋の最奥に辿り着くと、予想した通りの男が窓枠に腰掛けている。
言葉の意味を汲み取って、ドフラミンゴはニタリと笑った。

「何もしねェのに…か?」

あの日、海軍本部に到着した日以来、ドフラミンゴは度々私を訪れた。
しかし、私に手を出すことはあれから一度もなかった。
毎度他愛もない雑談をして、最後にキスをひとつ落とし去っていく。

「前に言っただろ?お前に惚れてるってな…!」


私はこの男の目論みが、一向にわからなくなっていた。
これも私を意のままにするための術なのだろうか。

「私はお前の言葉を何一つ信用していないし、私を手にかけたことも快く思っていない」
「なんだ、お前好みの抱き方じゃなかったか?お望みなら今からでも」
「お前は、何を企んでいる」

ドフラミンゴの冗談を制して、鋭い視線を向ける。

「…、その目だ」

ドフラミンゴは僅かな時間をおいて相槌を打った。
今まで纏っていた空気が重々しく変わったように感じた。

「お前を初めて見た時、鋭く美しい、揺るぎない信念を抱いた目をしていた。俺はその色に興味があった」
「…何の話だ」
「世界一の舞台女優が突如舞台を降り、海賊になった。しかも、龍騎士であることを隠していた…お前はどんな境遇で生きてきた?俺はお前の本質…芯を知りたい」

ドフラミンゴの腕が、ゆっくりと私へ伸びる。

「例えば、舞台で賛美される一方で裏稼業の輩に狙われる度に、強い不信感と孤独を抱いてきたのだとしたら、それらがお前の色を美しい色に塗り替えてきたのだろう。お前の内側を知るには、いくつかの大事なものをこわす必要がある」

ドフラミンゴが何の話をしているのかは、抽象的すぎて分からない。

「こわすべきひとつはお前のプライドや矜持だが、赤犬にぶちのめされようが海軍に下ろうが、その目は変わっちゃいなかった」

伸ばされた手は優しく頬を撫でた。

「だから、もうひとつ、麦わらを想う気持ちをぶちこわせば、確かめられると思って蹂躙した」
「…それはどういう」

言いかけた言葉は最後まで発することはなかった。
ドフラミンゴは私の腰を引き寄せて、深く口づけをしている。

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