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許色【ONE PIECE】

第8章 予感


出撃命令の内容は、白ひげの領地だった島で暴動を起こしている、海賊たちの鎮圧だった。
複数の海賊団が集まっていて、船長たちは皆そこそこ名の知れた能力者らしい。
頂上戦争後、このような暴動がそこらじゅうで起きていて、海軍の人出はいつも不足していた。

目的地はそれなりに大きな街で、戦闘の最中だった。
やりたい放題したのか大部分が壊れ、住民も巻き込まれているようだった。
偵察部隊によると、戦力のほとんどは街の中心部に集まり、そこに船長含む主力部隊もいるとのことだ。
私はスモーカーの命令も作戦内容も聞かず、上陸直前の船から飛び降り、一人街へ向かって駆け出した。
どよめく海兵たちの声と、勝手な行動を咎めるスモーカーの怒鳴り声が後方から聞こえた。

戦火へ突入すると瞬く間に敵を薙ぎ払い、次々と船長の首を討ち取った。
唖然と立ち尽くす海賊たちは、それ以上動くことはなかった。

街は、安堵と恐怖が入り混じった静けさを取り戻していた。


*


マリンフォードへの帰路、上層の甲板で風に当たっているとたしぎの声が聞こえてきた。
下階を覗き込むと、スモーカーと並んで、私の会話をしている。

「覇気で雑兵を一掃、簡単に戦闘の中心部へ…一瞬何が起きたか分かりませんでした」
「利き腕が使えねェから最小限で戦闘を終わらせたんだ、癪だが桁外れだな」
少しこわかったです、と言うや否や、海軍が海賊をこわがってどうする!とスモーカーが怒鳴った。

たしぎが言うように、帰路の船内ではスモーカーの部下たちが私を恐れ避けているように思える。
別に恐がられようとしたわけではない。
退屈な任務を短時間で終わらせたかったのは事実だ。
完全ではないが、負傷していた右腕もそれなりに使えるようになったことも確認できた。
それから、今日のようなことが毎度報道されれば、自身の生存を仲間に伝えられる。
目立つことも時に必要だ。

七武海での日常を、こうやって穏便にすごしていければと思った。
目的を果たし、ある程度時間を稼げたら、唐突に海軍から消えればいい。


頭上を飛び交うウミネコが、ぎゃあぎゃあと騒がしく会話している。
本能的に、雲行きの悪さを感じ取っているのかもしれない。
普段は気にならない不協和音が、妙に心地悪かった。


その予感は的中したのだった。

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