• テキストサイズ

許色【ONE PIECE】

第7章 煽情


私にとって、その行為は子を成すためか、快楽を得る手段でしかない。
舞台ではいくつもの恋物語のヒロインを演じてきたくせに、わからないのだ。
人の身を焦がし、時に力となり、時に破滅させる、恋慕というものが。

それゆえ、自尊心が傷つくことはなかった。
自分より強いものと闘って敗北するのと同じで、責めるとしたら、それは弱い自分をだ。


「何れにしろ、海賊同士のいざこざだ。お前が首を突っ込む必要はないだろう」

肩を掴む大きな手をゆっくり解き、バスローブを肩にかけ直す。

「違ェ…xxxx…俺は…」

スモーカーは私をそっと抱きしめると、首に残された痣を撫でた。
あたたかいと感じたことで、自分の身体が湯冷めしていたことを知る。

私と寝てしまったと思い込んでいる、真面目で優しい男の言いたいことはわかっていた。
私はそっとスモーカーの胸を押した。


「それより、何か用があってきたんじゃないのか?」

身体を離し切り返すと、スモーカーは思い出したかのように落ちていた資料を集め、手渡した。
出撃命令、と書かれた文書に目を通す。

「早速だが、明日近くの海域で暴れてる奴らを狩ってほしいそうだ」
「センゴクも人使いが荒い。着替えてくるからここで待て」

目を合わせたスモーカーは、まだ憤りを抑えられない顔をしていた。



寝室へ戻り、サイドボードに投げ出されていた着替えを手に取った。
ふと目をやったキングサイズのベッドの傍らには、許色の羽根が1枚落ちている。

私は、自分の感情の所在に戸惑っていた。

強引に拘束し、組み敷いておきながら、ドフラミンゴはちっとも乱暴ではかった。

まるで大切な恋人を抱くように。

わざとそうすることで、私が狼狽する様も愉しもうという趣向かもしれない。
あの男ならあり得そうな話だ。

しかし、そうした言動は一切見られなかったのだ。


窓の外は闇色の布を被せたように、あるべき姿を取り戻していた。

/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp