第1章 *序章*
『百合……さくら村は知っているね?』
『っ……ぅん……宇右衛門おじさん達がいる村……』
百合は両腕で涙を拭った。
『あぁ、そうだ……。
お前はおじさん達がいるさくら村に逃げなさい……道は、覚えているね?』
_コクッ『……。』
百合は小さく頷いた。
そして涙ぐみながら両親に目を向けた。
『なら、いい……さぁ……!
早く行け!!』
『っ……!』
『戦はタソガレドキ城とアカトギ城……どちらも強い城よ……
もし村人が一人でも生きていると分かれば即殺される……
だから、早く逃げなさい百合……!!』
2人は最後の力を振り絞るように百合を逃がすよう急き立てる。
『っ……お父さん……お母さん……』
『『百合……』』
『ぅ……』
『『お前(貴女)は生きるんだ/生きなさい!!』』
『っ……!』
百合は大粒の涙を流し、その涙は両親の手へ伝った……。
『っ……百合、早く……早く行くんだ!
もし敵がここに……っ!?』
父親は百合を突き放そうとした時、突如百合の突背後に
包帯を巻いた男が現れ、父親は大きく目を見開いた。
『っ!……涅色の忍装束に包帯を巻いた忍び……そしてその顔の火傷……』
どうやら母親も男の正体がわかっているようだ。
百合は理解ができないまま後ろを振り返った。
そして振り返った先にはなんとも不気味な忍が目の前に立っていた。
『ひっ……!』
百合は思わずびくりと肩をあげた。
『お前は……タソガレドキ城の……』
『おや?私の名を知っているのか……そう、
私はタソガレドキ城タソガレドキ忍軍の忍組頭、“雑渡混奈門”。
……君達の敵だね……』
『ざっと……こんな、もん……』