第1章 *序章*
_時は室町時代、いくつもの村が戦に巻き込まれ、
多くの儚き命が絶った時代……。
この日も、ある小さな村が戦の戦火に巻き込まれていた……。
『お母さぁんっ!!お父さーーんっ!!!』
戦火の中、幼き少女の鳴き声が小さな村に響く。
少女の目の前には、激しく炎で燃え上がる家、そして崩れ落ちた大きな柱の間に挟まれた、
_2人の男と女……。
『百合……父さん達はもう助からない……
お前だけでも、逃げるんだ……!』
少女の父親だと思われる男はなんとか動かせる左腕を伸ばした。
『っいやだ!!お父さんとお母さんといるのっ!!』
百合と言われた少女は父の手をまだ小さな両手で握る。
『百合……母さん達には逃げる術がないのよ……だから、せめて貴女だけは……!
生きて、欲しいの、母さん達の……分までね……(微笑)』
母親は百合に向かって笑顔を見せる。
それはまるで、我が子を安心させるかのように……。
『ぅ…ヒック…ヒック……やらぁ……ふたりといっしょ……百合ひとりはいやだ……!』
百合は大粒の涙を流す。
『百合……私達の言うことを聞いてくれ……父さん達は、十分に生きた……だが、
お前はまだまだこれからの未来がある……』
『そうよ……貴女にはこれから未来へ向かって生きるという使命があるのよ?
母さん達の、分まで……」
百合を励ます両親、だが、
その両親の声はどんどん掠れていく。
_間も無く、両親の寿命はないのだから……。
百合も、幼心にそれは感じ取っていた。