第1章 *序章*
『ざっと……こんな、もん……』
小さく男の名前を呟く百合。
『っなぜ……忍軍がここに……』
『偵察、とでも言っておこうか……さて……』
『『っ……』』
雑渡混奈門と名乗る忍者は一家をぎょろりと見下ろした。
『貴方方は、もう……生きていることが厳しい状態のようだね。
すぐに、楽にしてあげよう……』
_スッ……
混奈門は懐から苦無を取り出しす。
『っ!?』
百合は大きく目を見開く。
『私たちは、殺されても構わない……でも、でもこの子だけは……助けてく、ください……
まだ、5歳なんです……せめて、この子だけは生かして……』
『頼み、ます……百合だけは、見逃してくれ……』
両親は朦朧とさせながら混奈門に背がる……。
『お父さんお母さん!?』
『……わかった。貴方方の望み、叶えましょう……』
混奈門がそう呟くと、その場にしゃがみ込んだ。
『っ……お父さんとお母さんを殺すの!?』
『君は、目を閉じてなさい……』
『っいや!!!お父さんとお母さんを殺さないで!!』
百合は混奈門に掴みかかった。
『これは君の両親の願いだ。最後くらい、両親の言うことを聞いてあげなさい……』_スッ…
そう言うと混奈門は百合の目を左手で覆い視界を遮った。
『っいやぁぁ!!
おとうさぁぁん!お母さぁぁん!!』
そして鋭利な苦無は両親へ……
_ザシュッ!!
ザシュッ!!
振り下ろされた……。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
まだ幼き5歳の少女、百合の叫び声が戦火の中燃える村に響き渡った……。