第6章 におい
ゆったりした木造のソファーはお気に入りだ。
かなり値段の張るものだった。
艶やかな血のような紅い皮と、やわらかな心地よさ、脚に塗られたニスも独特の味がある。
真珠のような、この滑らかな肌によく似合う。
つくづく、いい買い物をした、そう思った。
「あっ、や……っ」
もどかしいくらいの柔らかい刺激しか与えていない。
両脚を擦り合わせ、そのまどろっこしいのを耐えているようだ。
「んっ、も、もぉ…」
「もう、なんだ?」
意地悪く聞き、顔を隠す仕草に、その繊細な指先に目がいく。
無理やり引き離すと、赤く色付いた顔が見上げてきた。
「……っ」
「言えねえのか」
「だって…」
「だってじゃねえ」
へし折れそうな細い首に、そっと鉤を走らせる。
最初の頃のような怯えはない。
少し角度を変え、薄いその皮を破き、鮮やかな紅玉が首もとを飾る。
真珠に映えるその首飾りを、胸元に模様を描くまでじっくりと見つめた。
「…最高だ」
痕がどれだけ綺麗に残るだろうか。
我ながら、最高の所有印を刻めたことに思わず笑みを溢す。
「痛ぇか?」
「すこし、だけ…」
滴る宝石を舌に乗せ、まっさらな肌に。
「ん、は、ぁ…っ、うぁぁ…」
その仕草に、上擦った声が、体内に入り込むコイツの血潮のように、書物に染み込んでいくようだ。