第5章 拘りの肌触り
「あら?ちゃんは?」
「マネージャー研修だ」
「そう、いつもくっついているから」
ニコ・ロビンは、その日残念そうに言った。
「奴隷と言ってた割には、随分熱心なのね」
「これから忙しくなる。人手はいくらあっても足りねえ。
その為にも、アイツにはみっちり仕事を教え込んでやる」
「夜のも、お仕事かしら?」
嫌味かというくらい、腹が立つ言い方をしてくる。
むっとした空気を悟ったのか、悪かった、とだけ言った。
「童話の導入は思い出した」
「……例の?」
不思議そうな顔を彼女はした。
「それで?」
「孤独な魔女が民衆に嫌われ、砂漠のド真ん中で暮らし始める。
そこまでは思い出した」
「どっかの誰かさんと、被った?」
「さあな」
葉巻の煙が室内に舞う。
泳ぐ鰐のように、ゆっくり形を変えて。