第4章 堕ちていく
「ん、美味しいです…」
「機嫌、直ったか」
「…はい」
「」
耳元で名前を呼んでやると、肩を震わせる。
「はい……、社長もいかがですか?
甘いのは、お嫌いでしたか…?」
「そうだな」
口を塞ぎ、無理やり開かせれば、ほんのりと残った飴の味がする。
「悪くねえ」
「んん、ん、ふ……」
小さな舌を舐めとり、己の口内に誘導させ、じゅるっと音を立たせて吸い付く。
やわやわと変形するそれが、甘い味を放つ。
「社長、ご入浴の準備が……」
ノックと共に、邪魔な声が入る。
「立て込んでる。
大体コイツにやらせろと言ったはずだ」
「も、申し訳ありません……さんのお姿がどこにもありませんでしたので……」
「んっ、ん、ふ……」
反響する声が、部屋とはまた違った淫靡さがある。
同じ香油の匂いがする身体を貪れば、例え水の中だろうが、しっかり反応はする。
「ん、ぁ、しゃちょ……、くるしそう、です……」
何日、何週間、何ヵ月、この下らない行為を続けていくのだろうか。
それでも、肌には触ることが出来るが、その先に進むことを、上手く言えないが、正確にはしたいがしたくない、そう思っていた。
それがどういう意味で、なんの意図かはわからない。
小さな子供が、ケーキの苺を取っておくようなモノだろうか。
我慢すればするほど、その飯は美味いのか。
それも違うのではないか。
今日こそ、今日こそ、と、野生の鰐のようにタイミングを狙っているはず。
チャンスはごまんとあったはず。
それでも、その先に進んでいないのは、何故なのか。
「ああ、苦しいかもしれねえ」
「え!?」
「治してくれるか?」
「私に出来ることがあれば……」