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水宝玉と雪華【ONE PIECE】【裏】

第4章 堕ちていく


「これはこれは、美しいお嬢さんで」
面倒な男が遊びに来たものだ。
煙を吐き出しながら、そのでかい身体と、ひらひらとはためく羽を見ながら呆れる。

「何しに来た」
「新しい女が出来たと噂になってな」
連れ出した記憶なんてないが、情報漏洩甚だしい。
問い詰めて片っ端から干からびさせてやる、と怒りを押さえながらその男を再び見る。
「こんな趣味だったか?」
「コイツはただのペットだ、そういうんじゃねえ」
舌打ちすると、下がってろ、と命令した。
「あ、でも…、まだ靴磨きが……」
「さっさと視界から消えろ」

苛立って強く言う。
いつものことだが、はっとした顔にどうも弱い。
どうにも、やってしまった、という罪悪感が込み上げる。
道具を揃え、アイツは慌てて奥に引きこもっていった。
「あーあー、下らねえ痴話喧嘩見ちまったぜ」
「用がねえならさっさと帰れ」
「もう済んだっつーの。
お前のさっきの顔が、いい土産だ」

何年ぶりだろうか、このモヤモヤとした自己嫌悪は。
もうその日の仕事は切り上げ、小さな影が消えていった部屋に自分も入る。

「うっ、ひっく…」
「泣いたら殺す、前に言わなかったか?」
「ご、ごめんなさい…」
ぐずぐずと鼻を啜りながら、ガキは言う。
小さくても女というのは本当に面倒な生き物だ。
容赦なくコイツもミイラにすればいいのに、なんの気かわからないが、引出しから菓子を取り出す。
「これでも食ってろ」
見た目鮮やかな飴細工に目を奪われたのか、潤んだ瞳のまま、嬉しそうな顔をする。
「綺麗……」
華やかな模様の入った飴を手に取り、口に含んだ。
珊瑚のような鮮やかな膨らみが小動物のように動く。
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