【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第14章 会いたい※微裏
あの日から、ポアロに零の姿は見なかった。
ああ…これが終わりだったんだと、察した。
私は零の特別になれることなんてなくて。
でも、瞬間瞬間は…私の中にいる。
零に会えなくなった、私が関わってしまったから。
絶望した心に、与えられる光は何もなかった。
「では、お疲れ様でした」
「おう、気をつけて帰れよ」
ありがとうございます、と告げて出て…今日もポアロの中を外から横目に確認する。
零が、いない。
諦めないといけない。
零は帰ってこない。
もう、会えない。
…わかっているはずなのに。
気がつけば、座り込んでいた。涙が溢れて苦しくて。
「こんにちは、○○さん」
体調でも悪いんですか?と声をかけて来たのは…あの日、ベルツリー急行にいた工藤有希子さんのそばにいた…確か名前は
「沖矢、さん…?」
「覚えていただいて光栄です」
膝をついてハンカチで涙を拭う彼の姿は……
「よかったら、愚痴くらい聞きますよ」
零に似てる気がした。
「…っ…」
会いたい。
私は、今零に会いたい。
差し出される手を取り、涙が溢れた。
私は…
降谷零に今すぐ会いたい。
泣き続ける私に泣き止むまで肩をさすってくれた。
車で送りますよ、と支えられながら歩いて。
帰りたくない、と小さく言えば困ったように沈黙が過ぎ…
「…よかったら、僕の家で飲みますか?」
借していただいてるんですけど、と付け加えられながら。
血迷っていたんじゃないかって自分でも思う。
ただ、私は…
そばにいてくれるなら誰でも良かった。
工藤新一宅。
調べているときに何度も見ていたから、外から見て一目でわかった。
車を停めて、外から開けられるドア。
…手を差し出されてその手に触れ、部屋の中に入った。
「…すみません」
「大丈夫ですよ」
ソファに座り俯いてる私にお水と、
“バーボン”のボトルが数種類。
「…沖矢さん、バーボンがお好きなんですか?」
「えぇ、その中でもお勧めを置いてみましたが気になるものはありますか?」
「…BOOKER'S」
「飲み方は?」
「沖矢さんと同じで」
その日、私は出会って2日目の人と体を重ねた。
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