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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第94章 〝私〟について(その2)


触れていると愛されていたことが、溢れ出してくる。それまで全く浮かんでいなかった感情ですら、私の中から溢れてくる。
心の底から、求めるかのように。

「……○○さん?」

薄暗い部屋、声をかけられた先はベッドの上。
体を起こして、膝を抱えるように座っていた私に蘭さんが声をかけた。

「あ、蘭さん……ごめんね、起こした?」
「いえ、そんなことはなくてっ……その、泣いてるように見えたから」
「泣いてないよ。……早めに起きちゃったからどうしようかなって悩んでたとこ」

ごめんね、と謝るとまた小さく首を振られる。

「何か飲まれます……?」
「気にしないで大丈夫だよ。……あ、今日の朝ごはん私が作っていい?」
「はい、それはもちろん」
「ありがとう。じゃあ蘭さんは気にせずにゆっくりしてね」

はい、と眠そうな声で返されて、ふっと頬が緩む。
起こさないように気をつけながら部屋を出てリビングで静かに腰を下ろす。
困った。
困ってる。
好きだとか、嫌いだとか、……それすら、確認できない。
傷つけたくないんだ。

「れい」

口にすると、それはとても落ち着く名前で。
もっと、呼びたくなる名前。

私が彼を愛していたと、強い言葉で言えるほどに愛し合っていたのだとしたら――
ふと、顔を上げるとリビングで充電していたスマートフォンが光った。

――04:24 〝安室透〟

その表示を見て、慌てて光っている画面を指で押した。

「もしもし……っ!」

メッセージかと思ったら、着信で。
それに驚きつつも電話を出る手に迷いはなかった。
電話の向こうからはなにも聞こえない。否、静かな呼吸音が聞こえる。

「もしもし?」

切れたのかな、とスマートフォンの画面を見ても間違いなく相手は安室さんの表示で、通話中。

「零?」
『っ……』

息を飲んだ音が、聞こえた。

『……○○』

小さな、微かな息が漏れるような呼び方で。

「はい」

怯える子どものようだとすら思った。

『会いに行かなくて、ごめん』
「……ううん、大丈夫、です」
『もう少し時間が欲しかった』
「うん」
『……電話、出ないと思った』
「夢を、見てました」
『ん……?』
「夢の中身は覚えていないんですが、……でも、多分、間違いなく、貴方の夢」

会いたいと、声を聞くと思う。
思ってしまう。
思って、しまった。


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