【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第92章 それが例え間違いでも
毛利探偵事務所。
窓ガラスに大きく書かれたその文字に、掲げられた看板。
入院していたときの御礼にと手土産を買いに途中立ち寄ってもらったけど、……もしかしてもっとお高いものがよかったのかもしれない?
なんて、毛利探偵事務所の下にある喫茶店の中をガラス越しに店内の様子を確認した。
その行為に理由があったわけじゃない。
店内が気になったわけでもない。
ただ本当に、自然と、喫茶店の中、特にカウンターが。
「○○姉ちゃん、どうかした?」
「あ、ううん。……なんでもない」
店内に女性の店員さんしかいない様子で。
さらにわずかにがっかりする私がいて。
階段をのぼり、探偵事務所の扉を開けた。
「おじさん、ただいまー。○○姉ちゃん連れてき」
中に入っていく少年の後ろ。扉の前で一呼吸置いて、足を踏み入れて。
「……○○?」
安室さんが、いた。
「ぐ、偶然だからな!」
コナンくんも驚いた様子なのを見ると、その言葉は本当なのだろう。慌てている髭の男性は、毛利小五郎。
そして、その隣にいるのが、安室さん。
「偶然、安室くんが休みだからと来てくれたんだ。○○と鉢合わせさせないようにコナンにもメールを送ろうとしたところで」
「先輩、焦りすぎです。……疑ってませんよ」
まるで浮気現場でも見られたような早口の言い訳に、なんだか懐かしくて笑ってしまう。
〝先輩〟。
自然と出たその呼び方に、私とこの人の関係に信頼関係があったのだとよくわかった。
今にも泣きそうな顔をする先輩に笑うのは失礼だとわかっていても堪えられなくて、背中を向けて顔を隠す先輩に、安室さんもコナンくんも見守るように微笑んで。
「……すみません。僕はお邪魔のようなので、退散しますね」
引き止めようと先輩が伸ばした手を交わし、安室さんが私の隣を過ぎる。
過ぎた時に見えた横顔が、傷ついているように、見えて。
「安室さん、待って!」
安室さんの手を掴み、引き止めたのは小さな体。
それでも、顔は私たちに向けようとせず背中を向けたまま足を止めた。
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