【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第92章 それが例え間違いでも
夢を見た。
悲しい夢だった。
目が覚めて覚えているのは後に残った感情だけ。
どんな夢だったのか覚えていなかったけど、それでも、悲しい夢だった。
「おはようございます」
「ああ。お目覚めですか」
……キッチンに立つエプロン姿の糸目の男性。
昨日見た赤井さんと同一人物であるのはさすがに理解しているけど、そんなすぐに慣れることはできない。
「沖矢さん、ってお呼びしたほうが良いんですよね」
「ええ。お願いします」
偉そうじゃない、と言ったら怒られるだろうか。
昨日の赤井さんは有無を言わせない強さがあったけど、今の沖矢さんは優しい。……というより胡散臭い。
向けられる好意が嘘だとわかった途端、視界がクリアになるなんて自分自身にあきれてしまうけど。
どうぞ、と食卓に出された朝食に手を付ける。
……美味しい。
美味しいけど、……物足りなさを知っているのは安室さんの作った料理が美味しすぎたから。
「彼の料理が恋しいですか」
「……どうして」
「以前の貴女が自慢げに話してましたので」
「沖矢さんは、安室さんと仲良いんですか?」
「いえ、顔見知り程度ですね」
意外だった。
知った風に話すから、旧知の仲なのかななんて。
今更、この人が本当のことを言っているかなんてわからないけど。
「○○さんっ!!」
パーンッ、と勢いよく部屋に入ってきたのは、コナンくんで。
「おじさんが、○○さんに会いたいって!」
嬉しそうに笑うその少年が、思わず走ってきたのだろう。
息を乱しながら、早く報告したいんだというようで。
「では、今日はボウヤに君をお願いしようかな」
「え、沖矢さんは行かないんですか?」
「ええ。残念ながら今日は予定がありまして」
「だから僕がね、案内するよ!」
○○お姉ちゃん、と服の裾を引っ張りながら見上げてくる。
「じゃあ、お願いするね」
子どもらしい一面もあるんだな、なんて。
お姉ちゃん、なんて言われることにこそばゆい気持ちを覚えた。
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