【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第92章 それが例え間違いでも
眠れず窓から外を眺めた。
門のほうを眺めて、何かを思う。
私は、この場所から誰かを見ていた。
多分それも、きっと、降谷零なのだろう。
自分から出て行ったその日に、戻りたいなんて思うとは思わなかった。
あの人に会いたいと、思うとは。
「……零」
特別な名前。
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、そして、幸せな気持ちになる名前。
都合が良すぎるだろう。
自分でも、軽蔑するほどにそう思う。
でも、同時にどこかそれにしっくりしてしまう。
明日。
明日が来たら、あの少年に謝ろう。
そして、知っていることをすべて教えてもらいたい。
置いていったあの指輪を酷く恋しく思った。
あまりにも都合が良すぎる自分に軽蔑する気持ちが生まれながら、それも自分なのだと、……今はこれ以上否定するのはやめておくことにした。
『別れよう』
私にそう告げる安室さんは、私が知っているよりもとても若く見えて、警察官の制服を着ていた。
どうして、という言葉を口にするよりも先に安室さんは背中を向けて立ち去ってしまう。
追いかけようと伸ばした手は、届かなくて。
足は石のように固まり、動けなくて。
声を上げようとしても音にならなくて。
嫌だと言いたかった。
別れる必要なんてなかった。
離れたくなんてなかった。
あの時も今も、
私は、零と、
一緒にいたいだけだったのに。
→