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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第92章 それが例え間違いでも



「……零」

目を開けば、その人がまるでそこにいるんじゃないかと期待した。

「目が覚めたか」
「……誰、ですか」

室内なのにニット帽を被り、煙草を吸いながら私の目覚めを待っていたであろうその男に目を向ける。
誰、と口にしたのは条件反射のようなもの。
警戒はなかった。
わかる気がした。
その声が、意識を失う前に聞いた。そして、その声をあの少年は。

「赤井さん……?」
「思い出したわけではないんだな」

私は、沖矢昴という人に騙されたのだと、理解した。
甘い睦言に浮かされて、……知った温もりだと勝手に信じて。
でも、どうしてだろうか。

「私は、……沖矢さんの恋人じゃなかったんですね」
「ああ。君は出会ったときからずっと、彼の恋人だ」

彼。
それが、安室さんだとなぜかすんなりと理解できてしまう。
あれだけ強い違和感を覚えていたのに、零という名前を口にすることができるだけで、それを受け入れられる。

「……〝零〟」
「君らしい顔になってきたな」
「え?」
「君が一番魅力的なのは、彼のために命がけで動いているときだからな」
「……はい?」

れいが、零というのがすぐにしっくりくる。
スケジュール帳にいれた「0」はやっぱり、零のことだったということ。

『そのスケジュール帳に書かれている丸印、僕が貴女とデートした日です。デートと呼べるのかすら怪しい日もありますが、○○は僕を愛していましたから。……だからそれは、数字ではありませんよ』

嘘だった。
それは数字だった。
愛していたことは、……嘘じゃない。それを自信をもって、彼が記憶のない私に言えるくらいに、愛しあっていたこと。



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