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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第91章 私の、本当の想い人


安室さんに病院の前まで送ってもらい、彼はそのままお仕事へ。
軽く聞いたくらいだけど、彼は喫茶店のアルバイト、個人での探偵業、それから探偵助手と忙しく働いているらしい。仕事が全てとは考えていないけど、その話を聞いた時に記憶を失う前の私のことを心配した。
未だに通帳やカードも返してもらえてない。引っ越しが決まった時に返すとは約束されたけど、……どうも、疑いを拭えないのは偏見だろうか。
そんな今日は、東京で最後の診察となる日。
病院で紹介状を書いてもらい、記憶については私自身が焦っていないなら、ゆっくりと、と。
何かをきっかけに思い出すかもしれないとは言われたけど……どうも、腑に落ちない。
複雑な気持ちのまま喫煙所のほうへと足を向けたのは、もしかしたら、と期待したから。

「いない、か」

沖矢さんの連絡先をもらったまま、退院してから一度も連絡をとっていなかった。
今日だって、必要以上のお金は持ち合わせていない。
さっきはあんなことを思ったけど。
……意地悪ではなく、安室透という人間が、私に対して過干渉なのだと認識を変えることでそれを事実として受け入れているけど、納得したわけではない。
抱きしめられた感覚が、今も残っていて、気分が悪い。
もっと、と求めてしまう感覚があるから。

「早く、……出て行きたいな」

あの人といるのが、怖い。
いつか後悔する。
今以上に。
離れたい。離れたくない。
そばにいたい。いたくない。

一緒にいたら、必ず私は、あの人のことを

「○○さん?」
「うわっ!?」

突然。
突然声をかけられて、体が大袈裟なほどビクッと硬って変な声が上がった。

「驚かせてしまったようですね」
「おき、やさん」

会いたかった、思わず口に出そうになった言葉を飲み込んだ。

「それ、……もしや、病院を変えられるんですか」

それ、と指さされたのは鞄からはみ出した書類。
紹介状がはみ出していることを目敏く見られてしまったようで。

「あ、はい。今、その、お付き合いしていたという男性の家にいるんですが落ち着かなくて。……九州のほうで、新しく生活をしようと思って」

もういっそ知らない土地で。
そう言う私に、沖矢さんが。

「行くな」

そう、……酷く傷ついた声で言った。


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