【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第91章 私の、本当の想い人
抱きしめられている。
そう気づくのに遅れるほど、沖矢さんが傷ついていることに驚いた。
嫌じゃなかった。
何故か、酷く落ち着く温もりだった。
「○○」
少しだけ、体を離して。
顔を上げた私の右頬に添えられる手。
「君を愛してる」
真っ直ぐに向けられるその言葉に、体を預けたくなる。
私は、これを知っている。
「沖矢さん、……この時計」
沖矢さんの手首に、ついている時計。
私が事故に遭った日につけていたという時計と、似ていて。
「……沖矢さん、なんですか」
違和感があった。
違和感だらけだった。
それが、なぜか。
「沖矢さんが、私の、……」
貴方を見ると落ち着いた。
貴方と話す時間が落ち着いた。
安室さんのように、緊張することもなくて。
「私の」
本当に、好きな人。
沖矢さんの目が合う。
静かに、優しく。
頷くようにその顔が近づいてきて。
唇が、重なった。
触れるだけの口づけに満たされる。
「沖矢さん、大事な人が、いらっしゃるって」
病院に。
告白して、保留となった相手が。
「君のことだ」
ああ、そうか。
そうだったんだ。
だから、こんなにも安心する。
……怖くない。
だって、この人が、私の
本当に、好きなーー
その日、私は、安室さんの前から姿を消した。
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