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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第91章 私の、本当の想い人


望んでいないことはしない。
そう。
……ああ、そうか。
そういう、優しさだったんだ。
私が取り戻したいとしたら、安室さんはそうしたのだろうか。
して、くれていただろう。

「そのスケジュール帳に書かれている丸印、僕が貴女とデートした日です。デートと呼べるのかすら怪しい日もありますが、○○は僕を愛していましたから。……だからそれは、数字ではありませんよ」

僕を愛していた。
そう告げる言葉はやけに力強かった。
……怖いくらいに。

「貴女のことを誰一人知らない土地のほうが、……今の貴女は新しく関係を築けるでしょう。それなら、偶然でも会わない場所で築かれてはいかがですか」

互いに、関わることがない場所。
期待しないで済む。
期待されないで済む。

「考えさせてください」
「…もちろんです」

では、と部屋を出ようとした私の手を掴んだのは、安室さんで。
掴んだ本人すら、戸惑った表情を浮かべていて。
でも…………この人に触れられたのが、初めてだって気づいて。

「……この部屋に貴女がいると、触れたくなるから入れなかったんですよ」

すみません、と言葉と共に拒まれていた理由を知って。

「少しだけ、……これ以上は触れませんので」

もう少しだけ、と紡ぐ言葉は搾り出すように。

「生きていてよかった」

…………ああ。
この人にとって、それが全てだったんだと、理解した。
どんな風に〝私〟と暮らしていたのかは分からない。
だけど、でも、〝私〟が結婚を意識していたのは、この人だと疑いはなくなった。
……目が覚めて一番にそこにいて、忘れられていることに傷つきながらも、手放せないほどに、〝私〟を愛していたのだと。



この人は、それほどまでに、〝私〟のことが好きだったのだと。




掴んでいた賃貸の資料を、ぐしゃ、と握りしめたのは、言葉にならない何かが、心の中で渦巻いたから。




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