【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第91章 私の、本当の想い人
「私は」
通帳とカードを返して欲しい。
暗証番号も、……教えてほしい。
就活だってしないといけない。
それに、……この家を、出たい。
「……私に、この家は窮屈です」
自由がない。
「以前の私は、……安室さん以外の人を好きだったんじゃないですか」
「……どうして、そう思われるのですか」
「日記、と言えるほどのものじゃないですがスケジュール帳にたくさんの丸が書いてありました。いえ、丸に見せかけたゼロという数字」
はっ、としたようなその顔には思い当たる節があるのだろう。
「そのスケジュール帳、……僕に見せてもらえませんか」
……いい、のだろうか。
〝私〟は嫌じゃないだろうか。
でも、……
「部屋に、入れてくれるなら」
「……僕がスケジュール帳を確認する間だけなら」
仕方ない、と言わんばかりの妥協案。
すぐに取ってきます、と告げてパーテーションで仕切られた自分のスペースから、スケジュール帳を持ってきた私を安室さんは扉を大きく開いて招き入れる。
部屋に入った私は、スケジュール帳を安室さんに渡す。
パラパラとめくる彼から視線をずらし、部屋内を見渡した。
……ギター、弾くんだ。
「何も触らないでくださいね」
ベッドを背もたれにするように腰をかけた安室さんを見下ろす形になり、安室さんは己のパソコンとそのスケジュール帳を見比べて、小さく笑った。
優しい笑みだった。
……私に向ける笑顔とは違う、笑顔。
本当に好きだったんだ。
「ありがとうございました」
確認終えました、と差し出すように返されたスケジュール帳。
それから、出ていってください、と言わんばかりの笑み。
「……どうして、安室さんは私をこの家に置くんですか」
記憶を取り戻させたいわけでもないなら。
「僕に、……○○を諦める時間が欲しかった」
小さく呟いた答えは、……全く予想にしていない言葉で。
「僕のわがままに、巻き込んですみませんでした」
これ、と渡されたのは、……賃貸の資料。
「九州に、良い病院があるんです。その土地は治安も良い。貴女が入院していた病院に紹介状を書いてもらえるように話してあります」
どうして。
「貴女は、僕が知っている〝○○〟じゃない。そして、……それを求められることも、嫌なのでしょう?」
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