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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第91章 私の、本当の想い人


料理も含めた家事全般を、安室さんが行っていた。
リハビリもかねて、と洗濯物を干したり畳んだら程度の手伝いはしたけど、本当にその程度。

安室さんは、何を考えているのか分からない。

でも、一つだけわかったのは、以前の私は、安室さんのこと以外にも、誰か思う人がいたらしい、ということ。
そのことを安室さんは知っていたのだろうか。

知っていたから、私に思い出すことを強要しないのだろうか。
恋人同士だったような空気を、彼からは全く感じない。

探偵業に喫茶店のアルバイト、それから見習い助手をしているという彼に暇はないこともあるのかもしれないけど。
私に構っている時間などないとでも言うように思える。
……なんで、ここにいるのだろう。
探しても見つからない通帳やカードは一時的に彼が預かったと言われた。
質問をすれば、答えてもらえた。
でも、質問をしなければ教えてもらうことは何一つなかった。
当たり障りのない会話はあった。
今日何してたか。
毎日、夜の食事と共に聞かれる内容が尋問のようだと思い始めたのは一週間が過ぎた頃。

「安室さん、相談があるのですが。……少しよろしいですか」

彼の部屋をノックして、扉越しに話しかける。「お待ちください」と返ってきた声に、しばらく立ち尽くしていれば安室さんが部屋の扉を開いた。

「どうされました」

部屋の様子を見せないように少しだけ開けた扉に、また、もやっとした感情を覚える。

「部屋、入らせてもらえませんか」
「……リビングでも良いですか」

散らかってて、と浮かべる笑顔。

「安室さんは、……本当に〝私〟の恋人だったんですか」

堪らず、聞いてしまった。

「普通、記憶喪失になった彼女がいたら、もっと、思い出して欲しいとか思わないんですか」

思わないなら、なんで。
なんで、自由にさせてくれない。

「入院していた時だって、目が覚める前には毎日来ていたって本当どうかわからない。……目が覚めてからは、一度だって来ていなかった」
「…………貴女は、どうされたいですか」

感情的に声が大きくなる私に反して、彼の声はとても静かだった。



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