【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第88章 「「愛してる」」
本庁に着き「ここで待っていろ」と言われたら、身を隠すようにシートを倒して車で待つ。
そういえば、ここでも赤井さんがいたよな、とか。
──そんなことを思い出して苦しい。
いつだって赤井さんに助けてもらってる。
だから、だから、ちゃんと返事をしたかった。
勢いで断るんじゃなくて、ちゃんと考えて、言葉を選んで。
零につけないのかと聞かれてしまって、返答に困ってもらった腕時計をつけたのは今朝。
不思議と、赤井さんに対して断っても関係性が壊れるとは思っていない自分がいた。
利用価値がお互いにある。
悔しいけどそれが分かっているから。
──零との関係は壊れる可能性があるだけに、悔しさはある。
壊すつもりはない。だから、壊さないために静かに決着をつけたいんだ。
すぐに戻ってきた零と、車でドライブを兼ねて少しだけ遠出をした車の中。
東京湾の新施設、エッジ・オブ・オーシャンの話があがって、気が付いたら仕事の話になっていて、それに気が付いた零がやらかしたって顔をするからまた笑っていた。
せっかくだからと東京湾をドライブすることにして、客船ターミナル近くに車を停めた。
建築がほぼ完了している建物を遠目から窓越しに眺める。
また、東都がにぎやかになる。
新たなシンボルでなるであろうそれに、少しだけ胸が弾む。
「ねえ零、次のデートあそこに行こうよ」
「それまでデートはお預けなのか?」
「ふふっ、だって、これから忙しくなるじゃない」
掠めるような口づけをすれば、零は夕陽がまぶしいのか、目を細めて優しく微笑んだ。
「零が好きだよ」
夕日に背を向けて零に笑いかければ、目を大きく開いて──腕を掴まれて、抱きしめられた。
「どこにも行くな」
「零……?」
どうして。
どうしてそんなことを言ったのか。
はっ、となったのは私じゃなくて零。自身でも何言ってるんだって顔していて。
「零、変なの」
「変にさせてるのはお前だ」
不安を隠さないその声に応えるよう、背中に手を回して、抱きしめ返した。
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