【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第87章 裏切りの感情
好きだとか。
好意があるとか。
もっと、言葉はあったはずなのに。
「くくっ……ああ、熟れた果実のように真っ赤だな」
「~っ、これだから海外育ちは!!」
なんでも、ストレートなんだ。
口数少ないくせに。
どうして、なんで、こう、伝えてくるときは。
「私は」
分からないんだ。
答えは絶対に揺らぐことがなかった。
いつだってその答えは一つだけだった。
「……困ります」
「君が俺を理由に困ってる姿は、可愛いと思ってる」
「~っ、バカじゃないですか!?」
「君が俺の名前を呼ぶ声が好きだ」
「……やっ、だ」
抱きついたのは私からだったけど。
後ろへ一歩下がれば、赤井さんが一歩近づいてくる。
目をそらせないまま、逃げ場を失うかのように。
逃げ場を奪われることを、私が望んでいるかのように。
「俺は君を受け止める」
……知ってるよ、そんなこと。
赤井さんに迷ってる私のことが、気づかれてる。
零のことを愛してやまないはずなのに、誰もそこに入れないはずだったのに。
「わ、からないです。……分かりたくない……っ、赤井さんのことは、好きです。好きですが、それは、コナンくんに対しての信頼や、先輩に対しての『好き』と同じで……っ、同じじゃないと、ダメで……っ」
名前を呼びたくなる。
会いたいと思ってしまう。
ふとした時に思いだしてしまう。
頼りたいと思う。
頼ってほしいと思う。
声を聴けば嬉しいと思ってしまう。
そばにいたいと思う。
そばにいてほしいと思う。
そのすべてが、そのすべてを向けていたのは、……警察学校時代の友人たちと……零だけだった。
そして、今はそのすべてが零だけに向かっていた。
「これ以上……っ、好きに、させないで……」
今はもう、零しかいなかったのに。
「君に受け取ってほしいものがある」
「……え?」
そう言って渡されたのが。
「時計」
「ああ」
「~っ、いらない! もらえない!!」
人の話を聞いてほしい。
切実にそう思ったのに。
「GPSがついてある。それから、ここを押せば──俺に繋がる」
受信機となるであろう赤井さんは己の腕につけている腕時計を見せる。
ペアウォッチみたいだと思えば、…なんだかざわつく。
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