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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第87章 裏切りの感情


「彼の隣にいた女性、ベルモットだろう」
「……気づいてたんですか」
「ああ。あちらは気づいていないようだったがな」
「気づかれたら困るでしょう。……透さんは、引っ掛かりを覚えたようですが」
「ああ。牽制されたよ」

 沖矢さんのことを警戒している零にとって、赤井さんに繋がることならどんな小さなことでも見逃さないだろう。

「聞いても、いいですか」
「なんだ?」
「……スコッチのことと、今回の事件。似ていたんですか?」
「ああ、そちらか」

 そちらじゃなかったらどちらだと言い返したくなる気持ちはそっと飲み込みながら。

「似てはいなかった。ただ、…彼があの場にいたからだろうか。言葉の節々で、思いだすことはあったな」

 守りたかった人物を、守れなかったことを。
 …この人は、どれほどあるのだろうか。
 勝手に完璧な人だと思ってしまっていた。
 なんでもできる人だと思ってる。
 でも、だけど。
 完璧な人なんて、どこにもいないんだ。
 守りたいと思ったものすべてが守れるようなら、……この人は最初からその手段を選んでいる。

「赤井さん」

 この人の弱さを知りたいと思った。

「いつも、守ってくれて、ありがとうございます」

 体が勝手に動いていた。
 理性のすべてが警告信号を出していても、それを押しのけてそうしたかった。
 
「君は、……変わってるな」

 抱きしめた私を抱きしめ返すその大きくて強い腕は、安心を覚えてしまう。
 頬に触れる手が、耳をなぞり、首元へと滑らせて、唇をなぞる。

「……だめ、です」
「まだ何も言ってないが」

 焦らすように唇をなぞって、わずかに指先を口内に挿入れて、すぐに抜かれる。
 唇を指先で軽くはじく赤井さんはその熱を楽しんでいるようで。

「改めて言っておく」
「……はい」

 目をそらすことが許されない。
 まっすぐにその視線を、私の世界に、その瞬間だけは赤井さんしか映さないかのように。

「俺は、君が彼の恋人だと知ったうえで、君を愛している」



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