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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第87章 裏切りの感情


「下山?」
「彼も私も登山が趣味でねぇ…。ライブの後は、夜中から山を登り始めて…山頂で朝日を眺めながら、淹れたてのコーヒーを味わうのがルーティーンだったんです…。デビュー前もそうだったと彼は言ってたが」

 話を向けた布施さんに、円城さんが答える。

「ええ…さすがに山は登りませんでしたけど…徹夜で作曲した後は、よく朝からやってるカフェでコーヒーを」
「登山といえば、あなたも登山部だったそうですが」
「言っただろ? 幽霊部員だったって…だからザイルの結び方も知らねぇよ」
「登山家ならロープの扱いに慣れていそうだが」
「今回の犯行は無理そうでうね…」
「おい、どういう事だ? 波土はロープで殺されたのか?」
「ええ…ステージで肩からギターをかけたまま首をロープで3m近く吊り上げられて…」

 浮かぶ、あの光景。
 ……人の死に様は、すぐには忘れられない。何度経験しても慣れないことだった。

「だったら熱狂的なファンの仕業かもしれねぇぞ? 波土は、ブログでよく『死ぬときはステージの上で果てたい』って呟いていたからよ…。ファンがその望みを叶えたんじゃねぇか?」
「ホー…ブログでそんな事を…?」

 ものの例えですよ、と布施さんが告げる。アーティストだから、そういうこともあるだろう。

「それだけ音楽に真剣に取り組んでたって事です!」

 円城さんが食い気味に訴える様子は、さすがマネージャーというところだろう。

「まあ、そういう事なら俺は帰らせてもらうぜ?」
「あ…ちょっと!」
「だってよー。波土は3m近く吊り上げられていたんだろ? なのに、容疑者である俺達3人のアリバイのない時間が重なっていないのなら…誰かと誰かが協力してやらかした可能性はゼロ。誰にもできねぇ不可能犯罪なんだからよ!!」

 不可能。
 その言葉に、透さんの顔色が変わって──

「ねぇ、何なの?」
「え?」

 ベルモットさんが、透さんに小声で訊ねる。

「さっきからあの男を睨んでるけど、何かあるの?」
「あ、いえ…」
「どーでもいいけど、早くこの殺し…解決してくれない? 変装したままここに長居するのは危険なんだから…」
「ですよね…」

 きっと、赤井さんも今零と同じことを思いだしてる。

 そんな、気がした。



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