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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第87章 裏切りの感情


 筆跡鑑定の結果、紙に書いてあった文字は、被害者波土録道本人の文字だと分かった。
 まだ私たちを含む皆に書いた文字を照合したわけではないが、ほぼ間違いないだろう。
 そうなると、被害者は誰かに、何かに負い目を感じていて、それが動機となってしまった可能性が高いだろう。
 ここ数日波土というアーティストのことを調べていて、私も気になっていた点だった。
 イメージが変わったというか、作風というか。
 なんとなく、前よりも柔らかくなったというか。
 結婚をして家族ができているのだから、そういうことだろうと、そう解釈もできたんだけど。……もしも、そうじゃない理由があるとしたら。

「そういやぁ、波土が整形したって噂もあったねぇ…。もっともそいつは波土が高校を卒業した頃の話…だったかな?」
「前にも言ったでしょ? そんなのデマだって! だってその頃はお金がなくて私も彼も毎日のように運送会社でバイトして…ミュージシャンを続けるお金を稼いでたんだから!!」
「…なのに波土は苦労を共にしたアンタを捨てて別の女と結婚しちまったんだよなぁ? 確か結婚したのは16年前…。んで、今回発表する予定だった〝ASACA〟が作曲されたのが17年前。歌詞もつけずに17年間放っておいた訳…何かあるんじゃねぇのか?」
「おい君!? もうよさないか!!」
「社長さん…アンタも何か知ってんだろ? 前のライブの後、波土がアンタに食ってかかってたそうじゃねぇか…。『17年間なぜそれを黙ってた』って…。そしてそのゴタゴタの後、急に波土は新曲『ASACA』を出すと発表した…。何かあるとしか思えないがねぇ…」

 それは本当ですか、と目暮警部が訊ねれば気まずそうに答える。

「あ、いや…。彼がウチのレコード会社の所属になったのが17年前なんですが…。『ウチでデビューさせた本当の理由は…じ、実は私がこの円城さんに一目ぼれして言い寄る為だった』と冗談交じりに彼に話したんです…。そしたら、彼が予想以上に怒り出したんです…それが本当なら引退するって…」
「なるほど…」
「し、しかし波土さんが殺される動機には、ならなさそうですね…」
「そりゃそうですよ…。そのモメ事があった後は、彼も気を鎮めて下山してましたから…」





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