【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第87章 裏切りの感情
「ところで…、波土さんの携帯電話、どこにあるか知りませんか?」
「彼の控え室にも荷物の荷物の中にも見当たらなくて…」
「携帯なら波土はいつも胸ポケットに入れてましたけど…」
胸ポケットにはこれが、と高木刑事が取り出したのは証拠品の紙。
ゴメンな、と大きく記載されていた。
「そこでこれから皆さんに筆跡鑑定にご協力をいただきます。ホール内にいる皆さんにしていただく必要がありますので──」
透さんを見上げて、言葉に詰まった。
目線が落ち、顔色を変えて、何かを思いだしていて──そして、何かを深く憎んでいる様子で。
私はそれを知っていた。
それは、零が赤井さんに向けるときの表情。
ヒロくんが、関わっているときの。
「○苗字○○○さん、安室透さん?」
「「あ、はい」」
声が揃って、思わずお互いに顔を合わせた。
零の様子を伺っていたことをすぐに悟ったのだろう。心配はないとでも言うようにすぐに目線を高木刑事へと向けた。
「聞いてなかったんですか? 波土さんの胸ポケットのこの紙が入っていたんです。もしかしたら犯人が携帯を抜いた代わりにいれた紙かもしれないので…筆跡鑑定をやる為にホール内の皆さんに書いてもらおうかと」
「そういう事なら」
「もちろんです」
もちろんあなた方も、と布施を含む三名へと声をかける高木刑事。
ささ、と「ゴメンな」とノートに記載として高木刑事へと渡した。
透さんは周辺を見まわして。
「○○はこちらにいてくださいね」
大人しくしていろの意。
「透さんは」
「少し梓さんに用があって」
……私には近づくなってことか。
それもそうだ。
そのはずなんだ。
何度も言われて、約束した。
それでも、ベルモットさんに耳打ちするかのようなその距離の近さに嫉妬をするから、……自分が嫌になる。
自分に、それが言える立場じゃないのに。
迷いの答えが出ない。
透さんがいなかったら、私は沖矢さんの隣にいたのだろう。
自分がそうするであろうことが容易にわかってしまう。
分かってしまうから、いやになる。
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