【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第85章 I kiss you
何も言えない私の唇が解放されて、静かにソファーに寝かされた。
力が入らないのに、体が震えてしまっている。
もどかしすぎる快感のせいで。
見下ろされる視線から、目がそらせなくなって。
口角を上げた赤井さんに、期待で鼓動がうるさく鳴り響く。
触ってほしい。
抱いてほしい。
イかせてほしい。
赤井さんが、ほしい。
頭の中が、この先のことでいっぱいになりそうだった次の瞬間、
『────○○』
私を呼ぶ零の笑顔が浮かんだ。
「~っ、ごめんなさい!!」
赤井さんの体を力の限り押せば、よろめくその姿を横目にカバンと携帯を持ち、乱れた服を隠すようにカバンを抱えて工藤邸を飛び出した。
人気のない道に、これほど助かったと思うことはなかっただろう。
人気が多ければ、やけに目立っていた。
……ああ、もう。考えなしの自分が嫌になる。
赤井さんにまで、迷惑をかけたいわけじゃないのに。
路地裏で息と乱れた服を整える。
街灯の電球が切れそうなのか、チカチカと点滅していた。
暗く隠してくれた良いのに。
チカチカと光る灯りにすら、鬱陶しさを覚えてしまう。
隠してほしかった。
私の感情を。私自身を。
隠して、見えなくしてほしかった。
私からも、見えなくなってほしかった。
零に触れたい。
────赤井さんに触れたい。
零に触ってほしい。
────赤井さんに触ってほしい。
零に抱かれたい。
────赤井さんに抱かれたい。
零が、好きなのに。
────赤井さんが、
苦しい。
これまで私は、零以外を好きになんてなれなかった。
ならなかった。
なりたくなんてなかった。
なれるわけがなかった。
なんで、なんで。
なんで、今更。
やっと、再会できたのに。
やっと、零と幸せになれそうなのに。
零と幸せになりたいのに。
零のものでありたいのに。
今すぐ零に、抱きしめてほしかった。
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