【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第9章 初めての依頼人
蘭さんと先輩の背中を押すように事務所を出て…ドア先で透さんが人差し指をたて、唇に当てる。
静かに、という意味で。
「恐らく、こういうことですよ」
安室さんが言うのはこうだ。
まだ依頼人と先輩を会わせたくない人がいて、場所変更のメールで事務所を空にし、事務所の人間としてその依頼人として落ち合った…という話だった。
「で、でもなんでこんな事…コインロッカーを探してもらいに来ただけなのに」
「そのロッカーにとんでもねぇ物が入ってんじゃ」
“とんでもないもの”
その言葉から連想されたのが、爆発物や遺体。
そんなまさか、と自分の想像に肩を竦める。
「さぁ、それは…本人に直に聞いてみましょう」
扉を開け事務所に再度入った。
「ほ、本人って…」
「まさか!?」
事務所の中にいる、と安室さんは含めるように言葉を続ける。
「先生がトイレに入ろうとした時に、丁度返信が来ましたよね?そしてコナン君がトイレに入ろうとした時も」
「それにトイレの前に床にさー…何かを引きずったような跡がついてたよ」
私はどこか、この光景が他人事のように思えているんだと思う。
…それが、私が特技としてる“関わらないこと”。
許されるならこの場でパソコンを開いてこの状況を纏めてしまいたい気持ちはあるけれど。
「「ええっ!?」」
「そう…恐らくその誰かは何らかの理由で依頼人を連れ込み、まだ隠れているんですよ…」
心ここに在らず。
まさにそんな私の目を覚ましたのは…
「あのトイレの中にね」
安室さんの言葉に被るように鳴ったパァン、と聞いたことのある音。
一般市民が持つことが許されない、もちろんこの事務所にそんなものがあるわけがない…銃声音。
コナンくんと安室さんがトイレにいち早く駆け込んで。
私はその場から動かず、蘭さんの前に手を伸ばし近づかないようと前を塞ぐ。
「蘭さんは下がっていて」
「…○○さん…」
ぎゅ、と不安気に肩の服を掴まれたのがわかる。
毛利先輩も続くようにトイレを覗いている。
ここにいて、と私もトイレに近づいた。
久しぶりに嗅ぐ血の匂い。
そこで泣きながら震えていたのは、口や手足をガムテープで縛られていた女性だった。
血の匂いの原因はその女性の足元で倒れる男の頭から流れる血。
気分が悪い。
久しぶりにみた写真以外の遺体に、吐き気を覚えた。
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