【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第67章 言えない不安
「へぇ、長野の温泉ですか。旅館に宿泊!良いですね」
「あぁ、知り合いのガキの誘いでな」
…服部平次くん。
顔合わせはしたことがある、けど挨拶以外で話したことはない。
「お前も行くか?」
「……え?」
「たまには温泉でゆっくりも良いぞ、お前みたいに慌ただしい奴は」
「慌ただしくないです」
先輩からの突然の誘い。
「せっかくなんですけど…ごめんなさい」
「まだ駄目か」
「まだ?」
その言葉の意味が、私が作っていた距離感のことを指してることが分かって。
「違います違います!……先輩も気にしてたんですか、私の悪癖(それ)」
「まぁ、特に蘭がな。この間もプールの誘い断ったらしいな」
「プールは若い子の間で水着を着る自信がないからですよ。それに…透さんと付き合ってから、その辺は少しずつ改善していこうと思うようになって…」
まぁ、つまり。
「その日は透さんとデートなので行けないってことです」
「聞くんじゃなかったな」
先輩が、先輩の家族が、私のことを気にかけてくれている。
私を家族のようにと言ってくれる人たち。
「楽しんできてくださいね」
お土産待ってます、と言えば小さく笑われた。
…ということで、週末完全に時間が空いた私の予定を告げるとちょうど良かったと笑うのは降谷さんだった。
「…私は零に言ったつもりだったんですけど」
零の家。
遅くに帰ってきた零は、スーツを着替えに帰って来ただけだと言って長居できないことを告げた。
「恋人と仕事どっちを優先するつもりだ?」
「恋人です」
「奇遇だな、同じ意見だ。…まぁ、その場合、僕の恋人はこの国だけどな」
「規模が大きすぎて嫉妬になりません」
恋人が国とか言ってる時点で仕事優先するって公言したようなもの。
…いや、優先することは知ってるしそうじゃない零の方が嫌だけど。
「久しぶりに現場行きたいだろ?」
「降谷さんの女装以来ですかね」
「それは忘れろ」
シャワー浴びてくる、と言って浴室に向かう零を見送る。
「なーにがこの国が恋人ですか」
私の立場はなんなんだ、と拗ねてしまいたい気持ちとあまりにも規模の大きい話で拗ねるのも馬鹿馬鹿しい。
仕事の話も中途半端だったけど、それについては私に拒否権がないのは勿論だから。
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