【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第60章 緋色の帰還
「組織にいた頃から疑ってはいたが…あだ名が『ゼロ』だとあのボウヤに漏らしたのは失敗だったな…」
零。
貴方は今、何を思っているだろう。
…考えてみれば、私は零が敗北することを知らない。
だから…零の上手をいく赤井さんと…コナンくんが凄いって言葉以外に見つからなかった。
「『ゼロ』とあだ名される名前は数少ない…調べやすかったよ、“降谷零”くん」
ぞくり、と寒気が走る。
赤井さんの口から…零の名前がでるのは…全てを見透かされてるみたいで。
「恐らく俺の身柄を奴らに引き渡し、大手柄を上げて組織の中心近くに食い込む算段だったようだが…これだけは言っておく。目先のことに囚われて、狩るべき相手を見誤らないで頂きたい…君は、敵に回したくない男の一人なんでね…」
目先のことに囚われて。
…その言葉がやけに心に伸し掛かる。
「…それと、彼のことは今でも悪かったと思っている」
ヒロくん。
…赤井さんの後悔が、初めて見えて。
あぁ…
だから、この人は私に手を貸したんだ。
この子供みたいな願いを、叶えてくれたんだ。
勿論…それはついでだったかも知れないけれど。
車を出せ、とキャメルさんに声をかけて…
赤井さんの携帯が結城さんの手元へと投げ返される。
タイヤを鳴らして去る車を眺めて…
ありがとうございました。
口にすることは出来ないけれど、心の中で呟いた。
「降谷さんどうします?追いますか……えぇ、はい。了解です…はい、失礼します」
結城さんが携帯を切り、その場にいる全員に聞こえるよう声をあげた。
「撤収だ!!」
…よかった。
「…○苗字○さん、立てるか?」
「はは…ちょっと、…糸切れました」
「このまま座ってて…車の回収と合わせても、落ち着くの夜明けになりそう」
俺も座る、と隣に座ってくるその人を見上げて…
「…ありがとうございました」
頭を下げたと同時に、その人に…倒れかかった。
糸が切れた、その表現は比喩じゃなくて。
零のところに戻れるんだっていう安心感と…
「おいっ!?」
思ったより深かったみたい、と…寝不足も相まって貧血状態の私には、未だに滲む傷口すらダメージが大きくて。
「……そんな顔しないで……零」
ぼやける視界に、零がいた気がして…出来る限りの笑顔を向けた。
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