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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第52章 私だけに見せる※裏


部屋に入ると、そこには花束があって。
かすみ草に一輪の薔薇の花束と、…お店で選んだ、ペアリング…シャンパンとグラスが、テーブルの上に。

「…もう…っ」

貴方に敵わない。

「受け取ってもらえますか?」

背中から抱きしめられて…

「花束、可愛い…」
「…“貴女一人を愛し続けます”…」
「…え?」
「花言葉です」

知っていた。
零は、こういう人だって。
ロマンチックな雰囲気も、完璧に演出する。
だからハニートラップを零にされたら、誰だってオチるって不安だった。
いつも夢中になってしまうテクニックも。
私は…

「また違うこと考えてませんか」
「………違う…っていうか…私、凄い人に好かれたなって」
「恥ずかしいもんですよ、ここまで手の込んだことするの」
「…ほんと、いつの間にこんなことしたの」
「指輪買ったときです」

だから…長かったんだって思って花束を手に取った。

「零…キスしたい…」
「ええ」

喜んで、と言って抱き上げられて口付けた。
花束を胸にして、花の香りと…零の味。

「…抱かれたいって顔してますけど」
「抱かれたいって思ってますから」

もう、誰もいないから。
私はこの人を呼んで良いんだ…

「零…私も…貴方一人を、愛し続けます」
「…あぁ」

もう、この人から抜け出せない。
…キスに夢中になりかけた時…花束がくしゃ、と音を立てて…慌てて唇を離した。

「零…」
「…記念日です、シャンパン開けますか」
「ふふ…はいっ」

シャンパン開けてみたい、と言った私に零は後ろから手を取って、一緒に開けてくれた。ポン、と音を立てて。
グラスに注いで…向かい合って座る。
その前に、と右手をとられて、ペアリングを薬指に嵌めた。

「○○、僕にも」
「………左手、が良い」
「…ええ」

今この瞬間だけで良い…
零の左手の薬指に指輪をつける行為…それは、まるで結婚式で行う指輪の交換みたいだと…思ってしまって。
花束を膝に置いて、シャンパングラスを乾杯と軽くぶつけた。

「…まだ外、明るいね」
「夜はルームサービスですかね」

甘い笑顔を向けられて…

「…明日、仕事じゃないの?」
「仕事ですよ」

それなら家に帰った方が絶対良いのになんて思ったけど。

「もうお酒飲んでしまってので」

私の大好きな笑顔で、シャンパンに口をつけた。


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