第49章 溢れ出す本音(キモチ)

重なる体温から離れたくなくて。
抱きしめあった。

「…どうして、零に触れちゃいけなくなったのか…よくわからなくなってきた」

こんなに苦しいのに、こんなに触れ合いたいと思っているのに。

「……貴女が、その立場を自分から捨てたんじゃないですか」
「あの時は……零だって」

赤井秀一の姿で

「怖かったんだよ…私だって」
「…他の男に慰められる余裕があったようですけどね」
「っ…わかってる…私が、悪い…わかってる…」

赤井秀一を捕まえる意思はないと…この人に言ってしまったんだから。

「…わかってるけど……」

分かってるけど。
どうして抱かれたのか。
どうして零に助けを求められなかったのか。
…言い訳、になるのだ。全部。
言い訳でしかない。事実は変わらない。
それを伝えて私は許されたいのだろうか。
零が他の女の人を抱いたら私は許せるのだろうか。
…多分、許せない。

「何でもない…です」

だから、その先が言えない。
私が許せないことを、零に許してもらうのは筋違い。
本当に…沖矢さんにはもう抱かれるつもりはなかった。
でも、確かめずにはいられなかった。
誰にでも零と同じように抱かれてしまう自分がいるとしたら…そんなの、零に二度と触れてもらう権利がなかった。
そして…どちらにしても、零とこんな関係になってしまったけれど。

「○○は、…僕に嫌われたいんですか」
「っ、そんなことない！！」
「なら飲み込んだことを言ってください…っ…飲み込まないで…」

言えよ、と…

「………怖かった…」

零以外を零のように感じて零の熱を感じて…溺れて。

「私は…零以外に抱かれたくないのは…本当だよ…でもっ…どうしても、確かめたかった…本当に私は誰にでも零に対してと同じようになるのかって」
「沖矢昴」
「…調べてたよね…」
「相手だけな。…詳しいことまでは触るのは…やめた」

普通の恋をして普通に幸せになるなら…

「一瞬でも、普通に戻れない自分が嫌になるから」

院生だってな、と言われて。
違う…違うんだってしがみついた。

「…裏切ったのは、私で…零のことを頼れなかったのも私で…っ…」
「裏切らせたも、…頼らせなかったのも俺だろ？」

…どうしてそんなこというの。


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