【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第47章 貴方のことしか考えられない
昨日は、探偵事務所で資料を確認し、データを持ち出した。…もちろん、先輩の許可をもらって。
私の帰る場所をまた失うようなことがあってはいけないし。
土曜日…杯戸中央病院。
グレーのシフォンのワンピース。人当たりが良いような服装を選んだ。
先日ベルモットさんといた時に履いて帰ってきたヒールを履いて…
化粧をバッチリと決めて、きつくない程度に香水をつけた。
…そう、恋人の見舞いに来る彼女のように。
楠田の彼女、そう名乗ることが…
…だから、そんな姿で零と鉢合わせるなんて思ってなかった。
「奇遇ですね」
病院にタクシーで向かい、降りた目の前で立つ男。
降谷零……今は多分、安室透だけど。
「…奇遇、……と言いますか」
なにを探しにきたのかお互い分かってるだろうに。
「…っ…」
顔を見て話して、二人きりで。
もう十分に拷問だった。
触れたいキスしたい抱きしめられたい抱かれたい。
「どうされました?…体調でも?」
「…いえ、…いつものことなんで」
俯いて顔を見せないようにしたら…
手首を掴まれて、病院の受付に向かわれた。
なにをするつもりだと思えば、初診で、と言う彼に…
「…っ、安室さん、話聞いてください…!」
本当に大丈夫だから、と訴えながら…
「………言いますから」
「…お騒がせしてすみません」
受付の人に謝って…
手を握られて、待合ロビーの二人掛けの椅子に座る。
「…ここに来た理由、言わなくても同じだと思ってます」
「…ええ、そのようですね」
そうじゃない、と零が目を合わせて…
「体調、悪そうでしたけど…」
「……怒らないでくださいね、あと…嫌わないでください」
「?…え、ええ…内容次第ですが」
「どんな内容も、です」
零の唇にキスをした。
人目もたくさんあるから、一瞬だけのキス。
「………ちょっと待ってください」
軽くフリーズした零。
零の掌に、指でゆっくり文字を書いた。
れ
い
…今この場で呼ばない名前。
「…我慢したのにさせなかったのは貴方ですから」
「彼氏いますよね?」
「私が好きな人は…昔も今も…別れても変わりませんけど」
もういいですか、と立ち上がって。
「…安室さんさえ良ければ、ここは一緒に情報集めませんか」
楠田のことを一日で二人も嗅ぎまわるのは悪目立ちすると言う意味で言えば…零は、頷いた。
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